★ わお! 小泉首相も拝一刀(おがみいっとう)もびっくり!?
   〜 鎌倉時代の子連れ刺客・浅原為頼!!

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解散→選挙 〜 郵政民営
1.流浪→泥棒 〜 冥府魔道
2.潜伏→決断 〜 刺客依頼
3.決行→決着 〜 標的襲撃

 人には誰でも譲れないものがあるであろう。
 何が何でも成し遂げたい信念があるであろう。
 郵政民営化――。
 小泉純一郎首相にとって、これだけは絶対に譲れない信念なのである。

 平成四年(1992)十二月、小泉宮沢喜一改造内閣の郵政相に就任した。
私の祖父も郵政相を務めていたんだよ」
 祖父・小泉又次郎
(またじろう)浜口雄幸内閣で逓信相(ていしんしょう。郵政相の前身)を務めていた(「不況味」参照)
「それなら郵政省のオキテも、よく御存知ですよね?」
 そこで何があったかは知らないが、その時から小泉の信念の炎は燃え上がったのは間違いない。
「国に超巨大財布は不必要だ。郵政省は何が何でも真っ先に民営化すべきだ!」

 平成十三年(2001)三月、「神の国発言」などで支持率が一ケタまで急落した森喜朗内閣は総辞職、四月、小泉が第八十七代(五十六人目)首相に就任した。
「よし! 首相になれた! 郵政民営化をやるぞ!」
 いわゆる抵抗勢力の人々は、小泉の首相就任を快く思っていなかったが、高を括
(くく)っていた。
どーせつなぎの総理だから」
参院選にだけ勝てればいいんだから」
「変なことを言い出したら、すぐに降ろせばいいんだから」
 だが、八十パーセントを超える驚異的な支持率で参院選で圧勝した小泉は、いきなりぶちかました。
「今こそ『聖域なき構造改革』を推し進めなければなりません! 民間でできることは民間で! 郵政民営化は改革の本丸です!」
 抵抗勢力の面々は騒ぎ立てた。
「おい。それは自民党の公約じゃなくて、あんたの公約じゃないか!」
「私の公約は自民党の公約だ! 反対するなら私を総裁に選ばなかったらよかったじゃないですか! 郵政民営化が実現しなければ、私は自民党をぶっ壊します!」
 抵抗勢力の面々は怒り狂った。
「やっぱり小泉はダメだ。こうなったら小泉も郵政民営化もボツだ」
「じゃあ、代わりの総裁を出さなければならないが、誰かいるのか?」
「いない〜」

 平成十七年(2005)七月、小泉の念願である郵政民営化法案がついに衆院を突破した。
 が、自民党から綿貫民輔
(わたぬきたみすけ)衆院議長・亀井静香(かめいしずか)元建設相らが造反、わずか五票差という僅差(きんさ)での可決であった。
 敗れたものの、亀井らは自信を持った。
大丈夫です。参院では必ずノックアウトします!」
 参院衆院よりも自民党議員の割合が少ないため、わずかな造反で否決に追い込めるわけである。
 すると小泉はこんなことを言い出した。
「郵政民営化法案が参院で否決された場合、衆院を解散します!」
 武部勤
(たけべつとむ)自民党幹事長も言った。
「法案に反対した人には、自民党の公認を出しません!」
 亀井ら反対派は反発した。
「そんな『江戸の敵を長崎で討つ』ようなことが許されるものか!」

 八月五日、ついに山が動いた。
 態度を決めかねていた中間派の要人・中曽根弘文
(なかそねひろぶみ。康弘の子)元文相が反対を表明したのである。
「これで勝負はついた!」
「勝者につかなければ意味がない!」
「風に順
(したが)いて呼べ!」
 反対派は数を増し、法案は否決の公算が高くなった。

 八月六日夜、森喜朗前首相が首相公邸を訪れた。
このままでは法案は否決される。だが、解散は思いとどまってくれ」
 しかし小泉は頑固だった。
 外国のビールと干からびたチーズ
(実は高級チーズ「ミモレット」)でもてなしながら、逆に頼んだ。
「可決してくれればいいんだ。頼む。可決するよう努力してほしい」
「無理だって!」
「郵政民営化はおれの信念だ! おれは死んでもやるんだっ!」
 森はサジを投げた。
「こうなったらもう変人以上だ」

 八月八日、ついに参院にて決戦が行われた。
 案の定、郵政民営化法案は十七票差で否決、小泉は即日衆院を解散させた。
「御覧のように郵政民営化法案は否決されました。しかし、私の信念は変わりません。昔、ガリレオ・ガリレイは裁判で地動説を否定されたときに『それでも地球は動く』と言ったそうです。私は国民のみなさんに聞いてみたいと思います。この選挙は『郵政解散』です。郵政民営化に賛成か反対か、国民に真意を問いたい!」

 思えばついこの間まで、郵政民営化なんて国民の無関心事であった。
 国民の知らないところでどんなにたくさんのゼニが動いていようとも、誰がどんなにオイシイことをしていようとも、次元の違う全くの異国でのデキゴトのようであった。
「そんなことより、年金はどうなるんだ?」
「消費税は?」
「サラリーマン増税は?」
北朝鮮は?」
自衛隊は?」
 それが今では選挙の唯一の争点にまでのし上がってしまったのである
(もっとも野党は争点を一つにはしぼっていない)。アリの思いも天に登るとは、まさにこのことであろう。

 八月十日、小泉は武部にこんな指示をした。
「造反議員のいる選挙区すべてに自民党の公認候補を立てるように」
 こうして三十七人の造反議員のいる選挙区に、次々と対抗馬、いわゆる「刺客」が放たれたのである
(下表参照)

 反対派の人々は甘く見ていたかもしれない。
「まさか解散はしないだろう」
「解散はしても、公認は出してくれるだろう」
「公認は出してくれなくても、対抗馬までは出さないだろう」
 しかし小泉はこれらすべてをやってしまった。彼の怒りと執念のすさまじさが見て取れるであろう。
「是非もない」
 これに対して反対派の一部は、国民新党
(綿貫民輔代表。亀井静香副代表)及び新党「日本」(田中康夫代表。小林興起代表代行)を立ち上げて選挙戦に臨んだ。

 八月十一日、私はblog「瞬刊・歴史チップス(「時事チップス」の前身)」に「総選挙三国志」と題し、こんな詩を掲載した。

  報復絶倒、自民党
  夫唱婦随、公明党 
  造反有理、反対派
  捲土重来、民主党
  背水之陣、三国志

  断じて事を行えば、鬼神も之を避くのか?
  はたまた空しく一敗地に塗れるのか?
  運命の9.11。千門万戸の判決はいかに!

*               *               *

 さて、今回は鎌倉時代の「子連れ刺客」を御紹介したい。
「子連れ狼
(こづれおおかみ)」ではない。
「子連れ狼」は、子は刺客ではないが、今回紹介する人物は、父子共々刺客なのである。
 では、なぜ彼らは父子共々刺客にならなければならなかったか?
 いったい誰を、どんな理由で殺そうとしたのか?
 で、暗殺は成功したのか?
 父子の末路はどうなったか?
 すべては読んでのお楽しみである。

[2005年8月末日執筆]
参考文献はコチラ

*               *               *

「子連れ刺客・浅原為頼」主な登場人物 

【浅原為頼】あさはらためより。小笠原氏の支流。天下の大悪党。

【浅原光頼】あさはらみつより。為頼の長男。為継の兄。
【浅原為継】あさはらためつぐ。為頼の次男。光頼の弟。

【 景 政 】かげまさ。中宮の侍長。
【 備後守 】びんごのかみ。六波羅探題支所・二条京極篝屋の長。

【 女 嬬 】にょじゅ。宮廷の下級女官。
【権大納言典侍】ごんだいなごんのてんじ。西園寺ショウ子の部下。
【新内侍】しんのないし。西園寺ショウ子の部下。

【備後守の手下たち】
【ガラの悪そうな連中の親分】
【ガラの悪そうな連中】
【公家たち】

【平 頼綱】たいらのよりつな。内管領。鎌倉幕府の実力者。
【西園寺公衡】さいおんきんひら。実兼の子。ショウ子の兄。

【後深草上皇】ごふかくさじょうこう。後嵯峨天皇の子。亀山法皇の兄。
【亀山法皇】かめやまほうおう。後嵯峨天皇の子。後深草上皇の弟。

【西園寺ショウ子】さいおんじしょうし(ショウは金偏に章)。伏見天皇の中宮(皇后)。実兼の娘。

【伏見天皇】ふしみてんのう。伝九十二代天皇。後深草上皇の子。

【ナゾの紳士】

*               *               *

● 郵政民営化法案造反三十七士への刺客
選挙区(主要市) 造反組(当時の党派) 刺客(現前元職)
北海道10区(夕張市等) 山下貴史(旧亀井派) 飯島夕雁(青ヶ島村教育長)
青森4区(弘前市等) 津島恭一(国民新党) 木村太郎(元農水政務官)
秋田2区(大館市等) 野呂田芳成(旧橋本派) 小野貴樹(松下政経塾生)
埼玉11区(秩父市等) 小泉竜司(旧橋本派) 新井悦二(埼玉県議)
東京10区(豊島区等) 小林興起(新党日本) 小池百合子(環境相)
東京12区(北区等) 八代英太(旧橋本派) 太田昭宏(公明党幹事長代行)
山梨2区(富士吉田市等) 堀内光雄(旧堀内派) 長崎幸太郎(元財務官僚)
山梨3区(韮崎市等) 保坂武(旧橋本派) 小野次郎(元首相秘書官)
富山3区(高岡市等) 綿貫民輔(国民新党) 萩山教厳(元防衛庁長官)
福井1区(福井市等) 松宮勲(旧亀井派) 稲田朋美(弁護士)
静岡7区(浜松市等) 城内実(森派) 片山さつき(元財務省課長)
岐阜1区(岐阜市等) 野田聖子(無派閥) 佐藤ゆかり(証券会社部長)
岐阜4区(高山市等) 藤井孝男(旧橋本派) 金子一義(元行革担当相)
岐阜5区(多治見市等) 古屋圭司(旧亀井派) 和仁隆明(自民党職員)
滋賀2区(彦根市等) 小西理(旧橋本派) 藤井勇治(元自治省秘書官)
京都4区(右京区等) 田中英夫(旧堀内派) 中川泰宏(JA京都会長)
大阪2区(阿倍野区等) 左藤章(旧堀内派) 川条志嘉(元松下政経塾生)
奈良1区(奈良市等) 森岡正宏(旧橋本派) 鍵田忠兵衛(元奈良市長)
奈良2区(大和郡山市等) 滝実(新党日本) 高市早苗(元衆院議員)
島根2区(浜田市等) 亀井久興(国民新党) 竹下亘(前衆院議員)
鳥取2区(米子市等) 川上義博(旧亀井派) 赤沢亮正(元郵政公社部長)
岡山3区(津山市等) 平沼赳夫(旧亀井派) 阿部俊子(日本看護協会副会長)
広島6区(尾道市等) 亀井静香(国民新党) 堀江貴文(IT会社社長)
徳島2区(鳴門市等) 山口俊一(無派閥) 七条明(前衆院議員)
福岡10区(門司区等) 自見庄三郎(山崎派) 西川京子(前衆院議員)
福岡11区(行橋市等) 武田良太(旧亀井派) 山本幸三(元衆院議員)
佐賀2区(鹿島市等) 今村雅弘(旧橋本派) 土開千昭(郵政公社職員)
佐賀3区(唐津市等) 保利耕輔(旧橋本派) 広津素子(公認会計士)
大分1区(大分市等) 衛藤晟一(旧亀井派) 佐藤錬(前衆院議員)
宮崎2区(延岡市等) 江藤拓(旧亀井派) 上杉光弘(元自治相)
宮崎3区(都城市等) 古川禎久(旧橋本派) 持永哲志(元経産省課長)
鹿児島3区(枕崎市等) 松下忠洋(旧橋本派) 宮路和明(前衆院議員)
鹿児島5区(鹿屋市等) 森山裕(旧橋本派) 米正剛(弁護士)
※ 青字は当選。赤字は落選。緑字は比例で復活当選。
※ 能勢和子(旧亀井派)、村井仁(旧橋本派)、熊代昭彦(無派閥)は不出馬。
※ 青山丘(日本新党)は比例区へ移る。
※ 刺客のうち堀江貴文のほかは自民党公認。

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