1.誰がために夜は明ける | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2022>令和四年3月号(通算245号)侵攻味 小田原城奪取1.誰がために夜は明ける
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「こんにちは」
「だ、誰かね?」
「私、ネズミです」
「だよな〜。人間には見えないよな〜」
「折り入ってお話があります」
「ほう。ネズミが人間に?」
「ええ、大事なお話なので、種族を超えて話しかけてみました」
「そうかい」
「いえ、私的にはそんなに大事な話でもありません」
「どっちなんだい?」
「あなたの将来にとっては大事な話です」
「フハハ! この六十過ぎたジジイにまだ将来があるっていうのかい?」
「あるんですよ〜。あなた、長生きなさるんですよ〜」
「うれしいねー」
「私が今していることをよく御覧ください」
ガリガリ!ガリガリ!
「ネズミが大きな杉の木をかじっている」
「そのとおりです」
ガリガリ、バターン!
ガリガリ、ドターン!
「大きな杉の木二本をかじり倒した」
「そのとおりです」
むくむく! ガオー!
「大きな杉二本をかじり倒したあと、トラになって吠(ほ)えた」
「そのとおりです。これら一連の行為が何を意味しているかわかりますか?」
「さあ」
「考えてみてくださいよ」
「うーん」
「わかるかなぁ〜? わかんねぇだろうなぁ〜」
夜明けとともに伊勢宗瑞(「後北条氏系図」参照」)は目覚めた。
「不思議な夢だった」