5.大后さまのおしおき | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2007>5.大后さまのおしおき
|
こうして雄朝津間稚子宿祢は大王になった。
伝十九代大王・允恭天皇(いんぎょうてんのう)である。
允恭天皇元年(412?)十二月のことといわれているが、西暦年はいい加減であろう。
この翌年二月、忍坂大中姫は大后になった。
また、新羅から名医を呼び寄せ、允恭天皇の病気を治療させた。
「あらら、ボク、こんなに元気〜」
病気は治ったが、性格的なものはそのままであろう。
さて、大中姫は立后すると、一人の男を呼び寄せた。
「闘鶏国造を呼べ」
例の変なおじさんである。
大中姫に呼ばれた闘鶏国造は、何かもらえるのかと思って喜んでやって来た。
「何でしょうか、大后さま。えへへ」
「お前、私のことを覚えてないのか?」
闘鶏国造は顔を上げたが、首をかしげた。
「はて?このような美女に以前に拝見いたしましたかな?」
「私が幼い頃、お前は馬上からノビルを採れと命令した。ノビルを食べるのではなく、ただ虫を追い払うためだけに――」
「は!」
闘鶏国造は思い出した。
そして、大中姫の表情が激変したのを見て恐怖した。
「思い出したか。それなら、私がここにお前を呼んだ理由も、よくわかったであろう?」
「ぶ、ぶっ、ぶっ飛ばすので!?」
「いーえっ、そんなもんでは我慢できませんねー」
「ひえー!お許しくださいませーっ!」
「許さぬ!決して許さない!お前は処刑じゃ!死刑じゃー!」
闘鶏国造は捕らえられた。
彼は泣きながら必死で額づいて懇願した。
「ああっ、大后さま!お許しくださいませー。あの頃はとてもあなたさまがこんなにこんなにお偉いお偉いお方になられるとは、夢にも存じてもおりませんでしたー!どうか平に御容赦のほどをー!私は生涯、あなたさまにお尽くし申し上げます!一生、あなたさまのためだけに全身全霊で粉骨砕身いたしまするー!どうか、命ばかりはお助けうぉぉー!」
闘鶏国造があまりに無様にペコンペコン謝るので、大中姫はたまらず吹き出し、彼を稲置に降格しただけで許してあげた。