1.竿 竹

ホーム>バックナンバー2020>令和二年5月号(通算223号)商売味 紀伊国屋文左衛門のミカン伝説1.竿竹

怖いコロナ
1.竿 竹
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5.成 金

 はーい、最近の若いモンっす。
 ぶふっ! 最近っていっても江戸時代ですけど〜。
 年は二十歳ちょっとっす。
 紀州の湯浅
(ゆあさ。和歌山県湯浅町)をねぐらにしてまーす。
 通称・紀文、紀伊国屋文左衛門。
 まだ後は継いでないんで、ワル仲間からは、
「ぶん、ぶん」
 って呼ばれてます。
「ぼん、ぼん」
 ともいわれてます。
 わしのオヤジ、廻船問屋っすから。
 ようするに俺、金持ちのボンなんすよ〜。
 でもオヤジ、お金、なかなかくれましぇ〜ん。
 どはっ! だって俺、すぐに使っちゃいますから〜。
 あったらあるだけ全部使っちゃいますから〜。
 宵越しの金は持たねえ主義っすから〜。
 こんなヤツに怖くてカネなんて渡せないでしょ〜?

 昔はもらってました。
 七歳の時、オヤジから五十文もらいました。
「これを増やしてみな。できるかな〜?」
 挑発に乗った俺は、
「♪竹屋〜、竿竹
(さおだけ)〜」
 ちょうど、竿竹屋が来たので買いました。
 竿竹をばらして竹トンボをたくさん作りました。
 街で全部売ったところ、一貫
(千文)になりました。
 つまり、元手を二十倍にしたわけです。
 そうっす。
 俺は子供の頃から商才があったんです。
 金が貯まっちゃうから使っちゃうんですね〜。

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