3.略奪!石川郎女!!

ホーム>バックナンバー2012>3.略奪!石川郎女!!(いしかわのいらつめ)

金正日は病死したのか?
1.感動!吉野会盟!!
2.昇天!天武天皇!!
3.略奪!石川郎女!!
4,看破!山辺皇女!!
5.密会!大伯皇女!!
6.非情!持統天皇!!

 皇太子・草壁皇子は元気がなかった。
 父・天武天皇を亡くした以外にも理由があるようであった。
「何かあったの?」
 持統天皇が尋ねても、
「何でもない」
 草壁皇子はため息をつくだけで答えてはくれなかった。

 そのため、津守通が調べ上げて持統天皇に教えてあげた。
太子殿下は大津皇子にオンナを寝取られました」
 通の務める占星台は秘密警察でもあった。
「この歌を御覧ください。殿下が石川郎女
(いしかわのいらつめ)という女に贈った歌です」

  大名児(おほなこ)を彼方野辺(をちかたのへ)に刈る草の束(つか)の間(あいだ)も我れ忘れめや  

「単純な歌ね」
「ええ。これに対して石川郎女の返歌はありませんでした。次にこちらを御覧ください」

  あしひきの山のしづくに妹(いも)待つと立ち濡れぬ山のしづくに  

「こった歌ね」
大津皇子が石川郎女に贈った歌です。これには石川郎女も返歌しました」

  我を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを  

「こっ、これは……!?」
「そうです!石川郎女は太子殿下を振って大津皇子と寝たのです!殿下は大津に恋争いで敗れたのです!」
「うぬぬ!」
 持統天皇はカチンときた。
 彼女にとって草壁皇子は実子であるが、大津皇子は継子である。大津皇子の母は、彼女の姉・大田皇女
(おおたのおうじょ・ひめみこ)であった。
 その大田皇女は、天武天皇が即位する前に没していた。
 もし、彼女がもう少し長生きしていれば、当然のように皇后になり、実子の大津皇子皇太子に立てたであろう。つまり、持統天皇と草壁皇子は運がよかったのである。
「ふん!負け犬のくせに」
 持統天皇は怒りを押さえ込もうとした。
「女なんて星の数ほどもいるのよ。気にするほどのことでもないわ」
「本当にいいんですか?」
 言ったのは通ではなかった。
 いつの間にやらそばに控えていた藤原不比等であった。
大津皇子太子殿下からオンナを奪ったのですよ」
「恋の話です。仕方ないじゃありませんか」
「殿下からオンナを奪う者は、きっと皇位も奪いますよ」
「!」
「殿下は大津皇子に劣等感を持っています。殿下は病弱なのに、大津は健康です。外見も中身も文才も武芸も、何を取ってもどうひいき目に見ても、殿下より大津の方が上です。きっと殿下は大津に皇位を盗られたとしても、あきらめて落ち込むだけでしょう」
「……」
「見てて御覧なさい。今に新羅大津皇子に目をつけます。すべてにおいて殿下に勝り、殿下より人望のある大津皇子に肩入れします。殿下と大津皇子の間で戦いが起これば、殿下は必ず敗れるでしょう。そうです!日本は新羅に二度敗れ去るのです!」
「だまりなさいっ!」
 持統天皇は一喝した。真っ赤になって不比等に言って見せた。
「殿下は大津なんかに負けません!殿下は朕のたった一人の皇子です!たとえどんなことがあっても、朕が必ず守ってみせます!」

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system