4,看破!山辺皇女!!

ホーム>バックナンバー2012>4,看破!山辺皇女(やまのべのおうじょ・やまのべのひめみこ)!!

金正日は病死したのか?
1.感動!吉野会盟!!
2.昇天!天武天皇!!
3.略奪!石川郎女!!
4,看破!山辺皇女!!
5.密会!大伯皇女!!
6.非情!持統天皇!!

 藤原不比等の言うとおりであった。
 新羅僧・行心
(こうじん・ぎょうしん)大津皇子に近づいたのである。
太子の骨相は人臣の相にあらず。これをもって久しく下位にあらば、おそらくは身をまっとうせざらむ」
「何のことだ?意味が分からない」
「私は人相を見ます。太子、あなたの人相のことですよ。太子の人相は帝王の相だということてすよ」
「僕は太子ではない。太子は異母兄草壁皇子だ」
 行心は笑って続けた。
「あーあ。女帝の代になってから居心地が悪くなりました。先帝
(天武天皇)は親新羅政策を採っていたが、女帝はそのオヤジ(天智天皇)と同じく反新羅政策だ。新羅人は邪険にされている。そのうちにわしも東国のほうにでも追いやられるだろうよ」
「そんなことはない。女帝は優しいお人だ。新羅人だからといって罪人でもない人を追放したりはしないよ」
「そうでしょうか?わしなんかより、あなたのほうが危ない。あなたは女帝の継子です。はっきり言って、目の前のたんこぶだ」
「僕は異母兄と争うつもりはない」
「たとえ野心はなくとも濡れ衣は着せられます。歴史を見れば明らかでしょう。古人大兄皇子
(ふるひとのおおえのおうじ。「工作味」参照)も有間皇子(ありまのおうじ。「ウソ味」参照)も、野心なんて全く持ってなかったにもかかわらず、無惨にも殺されたのです。ただ、皇位に近かったばかりに」
「……」
「しかも彼らを殺したのは、女帝の実のオヤジなんです。分かりますよね?女帝にも同じ非情の血が流れているのですよ!」
「……」
「しかしあなたは殺されない。あなたには才能がある。人望がある。そして、半島の大国新羅があなたを後援する。あなたが立てば、病弱な草壁なんかに負けるはずがない」
「……」
壬申の乱で勝利した先帝のように、そう、あなたのお父君のように東国で兵を募りなさい。そして、非情な女帝とビョーキな草壁をほふり、天皇に即位するのだ!」
「たきつけるな!帰ってくれ!」
「分かりました。今日は帰りますが、何度でも来ますよ。私は女帝に追放されたくありませんからね。あなただって女帝に殺されたくないでしょう?それを阻止するためには、やはりあなたは立つしかないのだ!」
「……」

 行心は帰っていった。
 入れ替わりに妻・山辺
(やまのべ)皇女が帰ってきた。
「だれ?」
新羅人の坊さん」
 山辺皇女は天智天皇の皇女。つまり、持統天皇の異母妹である。
「ふうん」
 山辺皇女は話題を変えた。
「ちょっと市で小耳に挟んだんだけど、あなたって、浮気してないよね?」
「……」
「石川郎女って女、知ってる?」
「!」
 大津皇子が固まって黙っていると、いつの間にか山辺皇女の怒顔が目の前にあった。
「仕方ないよね〜。あなたってモテモテなんだから〜」
 やや低かったが、声は優しかった。それがまた恐怖であった。
 が、山辺皇女は意外な行動に出た。
「いや!捨てないで!」
 抱きついてきたのである。
「どこに行ってもいいから、最後には私のそばにいて!お願いだから、死ぬまで一緒にいてっ!」
「あああ、当たり前じゃないか〜」
 大津皇子の答えに、山辺皇女は笑った。思いっきり笑った。思いっきり笑いながら、思いっきりつねってやった。
「イテテテテテッ!すげえいてえ〜」
「このくらい当然でしょーがっ!」

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