1.就職面接

ホーム>バックナンバー2016>1.就職面接

ヒツジのち猿芝居?
1.就職面接
2.路上パフォーマンス
3.情報収集
4.決闘!熊本城馬場

「次の方、どうぞー」
 呼ばれて入ってきたのは、強面の牢人

 向い合って座ってきた牢人に、面接官が履歴書を見ながら聞いた。
「剣術関係の仕事をお探しなんですね?」
「ええ、ここの殿様
(肥後熊本藩主・細川忠利)が剣術大好きと拝聴いたしまして」
「そうですか。お名前は、ミヤモト、ムサシさん?」
「ええ、拙者がかの有名な宮本武蔵です」
「かの有名な?」
「ほら、巌流島
(がんりゅうじま)の決闘で佐々木小次郎(ささきこじろう。巌流)を一撃で打ち倒したあの剣豪ですよ」
「ごめんなさい。存じません。私、新任なもんで」
「新任とかそういうことじゃなくて、あったじゃないですか〜、二十数年前に〜、馬関
(ばかん)海峡にある船島で有名な決闘が〜」
「あ、そうそう。言われてみれば聞いたことがあります。思い出しました。確かに昔、そんなような殺人事件がありましたよねー」
「殺人事件だなんて、気分悪いな」
「でも、人が死んだんでしょ?」
「確かに死んだが」
「じゃ、殺人事件じゃないですか」
「そうじゃなくて、決闘って言ってくれよ!」
「でも、殺意はあったんでしょ?」
「決闘なんてそんなもんだろ!お互い命かけているんだからっ」
「では、殺意はあったでよろしいんですね?」
「オレは取り調べに来たんじゃねぇー!仕官を頼みに来たんだよー!」
「おーおー、ヒトサマにモノを頼みに来たのに、何このデカい態度」
「テメーがあおってデカくしたんじゃねーかー、コノヤロー!」
「ダメだこりゃ、はい、不採用!」
「上等だコラ!こんなとこ、二度と来るかーっ!」

 外で少年が待っていた。
 武蔵の養子の宮本伊織
(いおり)である。
「ちゃん〜」
「ごめん。また不採用だった」
「ケンカしちゃダメだよ〜」
「外まで聞こえてたか」
「聞こえるよ〜、声がデカいから〜」
「剣術家にとって声のデカさは重要だ。声がデカいだけで敵をビビらせることができる」
「面接官ビビらせてどうすんだよ〜」
「悪かった。お前は人間できてるな。今度からお前が面接行けよ」
「まだ働きたくねーよ。でも、カネもないのに今日のご飯はどうすんだよ〜?」
「日銭を稼ぐしかねーな」
「例のヤツ〜?嫌だな〜」

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system