4.決闘!熊本城馬場

ホーム>バックナンバー2016>4.決闘!熊本城馬場

ヒツジのち猿芝居?
1.就職面接
2.路上パフォーマンス
3.情報収集
4.決闘!熊本城馬場

 決闘の日の朝、村上吉之丞は待っていた。
 宮本武蔵が来るのを今か今かと待ち構えていた。
 熊本城の馬場には、剣術マニアの細川忠利も見に来ていた。
「楽しみだ。あの伝説の剣豪宮本武蔵が、余の前で、余の兄弟子と刃を交わすことになるとは」
「殿。勝負はおそらく一瞬です。まばたきせずに御覧ください」
「あいわかった」

 ドン、ドン、ドン――。
 辰の刻を知らせる太鼓が鳴った。
「約束の時間は過ぎた」
 吉之丞は気を緩めることはなかった。
「遅刻は武蔵の常套
(じょうとう)手段だ」

 が、巳の刻、午の刻、未の刻を過ぎても武蔵は現れなかった。
「どうしたことだ?」
 忠利は武蔵の宿に使いを出した。
 吉之丞は不安になった。
「まさか――、これは、無手勝流(むてかつりゅう。「剣豪味」参照)……」

 使いが戻ってきて報告した。
「武蔵は宿にいません!荷物も何もありません!今朝早く、御城下を離れたとのこと!」
 吉之丞の緊張はプツンと切れた。
 笑いがこみ上げてきた。
 悔しさも入り混じって爆発した。
 叫んで地団駄を踏むしかなかった。
「わああああーーーーっ!ヤツは天下の剣術家だぞ!伝説の剣豪だぞっ!こんなお粗末なオチがあるかぁーーーーっ!!」

 *          *          *

 その頃、武蔵は宮本伊織とともに旅路を急いでいた。
「ちゃん」
「なんだい?」
「これって、いわゆる、逃亡なんじゃないの〜?」
「アハハ、ボハボハ、ヒャッハッハー!」
 武蔵は笑ってごまかした後、真顔に戻っていった。
「伊織。剣術において、生涯無敗を貫く極意を教えてやろう」
「うん」
「自分より強そうな相手とは、戦わないことだ」

[2015年12月末日執筆]
ゆかりの地の地図
参考文献はコチラ

※ 寛永十七年(1640)、細川忠利は宮本武蔵を客分として召し抱えています

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system