2.大内義隆×毛利元就

ホーム>バックナンバー2022>令和四年4月号(通算246号)隆景味 小早川家乗っ取り2.大内義隆×毛利元就

大波三兄弟と毛利三兄弟
1.小早川正平×田坂義詮
2.大内義隆×毛利元就
3.小早川隆景×問田大方
4.田坂義詮×日名内玄心

「お屋形様」
「おお、毛利か」
「この度は大変な戦でございました」
「ああ、予のかわいいかわいい養子
(大内晴持)も逃げ帰る途中で溺死してしまった。ううっ!」
「お察しいたします」
「その方の家中でも犠牲が多かったのではないか?」
「はい。拙者も一時は息子
(毛利隆元)ともども自害を覚悟するほど尼子軍に追い詰められましたが、渡辺通(わたなべとおる)が身代わりになってくれたおかげで生きながらえました」
「ありがたい忠臣じゃ」
「そうそう。殿軍をしてくれた小早川正平も出雲の鳶巣川
(とびがすがわ。島根県出雲市)で死にました」
「おお、小早川は今度は尼子に寝返らずに死んでくれたか」
「あっぱれですが、困ったことが起こりました」
「何を困るのじゃ?」
「正平は沼田
(ぬた)小早川家の当主だったのです。当主がいなければ、お家は断絶です」
「沼田小早川家には跡継ぎはいないのか?」
「又鶴丸というのがいますが、まだ二歳です」
「成長するまで家臣に後見させればいいではないか」
「しかし、成長してもまっとうな当主になれるとは思えませぬ」
「なぜじゃ?」
「又鶴丸は病弱で盲目なのです」
「ううん。病弱だけならマシだが、盲目ではな」
「この際、小早川家を合体させてはいかがでしょうか?」
「合体とな?」
「ええ。小早川家は鎌倉時代に沼田荘
(ぬたのしょう。広島県三原市)を治める沼田小早川家と、都宇竹原荘(つうたけはらのしょう。広島県竹原市)を治める竹原小早川家に分裂して小競り合いを繰り返してきました。そのため、竹原小早川家の当主に沼田小早川家の当主を兼ねさせてしまえば、両家は一つになり、無益な争いをなくすこともできるでしょう」
「それはいい考えじゃ。で、今の竹原小早川家の当主とは誰なのじゃ?」
小早川隆景――。拙者の三男でございまする」
「我田引水ではないか!」
「いけませんかぁ〜?」
「いけないことはない。いつまた尼子に裏切るかもしれない小早川が毛利の配下になってしまえば心強い」
「では早速」
「しかし、沼田小早川家の人々は、毛利によるお家乗っ取りなんて承諾するであろうか?」
「乗っ取りなんて人聞き悪いことはやめてくださいよ〜。これは人助けなんですよっ。大丈夫です。毛利は沼田が尼子に攻められるたびに援軍を差し向けて助けています。そのたびに家中には親毛利派がどんどん増えていっているんですよ」
「あざといな」
「今では沼田で親毛利派でない者は、家老・田坂全慶
(田坂義詮・田坂善慶・田坂摂津守)と、その取り巻きぐらいです」
「そうか。では、田坂とやらが反発したらどうするのじゃ?」
「説得しますよ」
「説得しても聞かなかったらどうするのじゃ?」
「その時は、仏様になってもらうしかありませんな」
「おお、怖っ」

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