3.合流! 海津城! | ||||||||||||||
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待っても待っても動かない上杉政虎を見て、武田信玄は首をかしげた。
(おかしい。いつもの政虎なら、そろそろ戦いを仕掛けてくるはずだが……。これでは政虎のほうが『動かざること山の如し』ではないか)
信玄は考えた。
(何かある……)
相手は戦争にはめっぽう強いあの政虎である。その政虎が自軍に不利な状況から全く動かないのは、何か理由があると考えたのである。
(まさか……。政虎は越後からの援軍を待っているのではないか)
信玄は不安になった。越後を背に布陣しているこの状態で援軍が来れば、武田軍は挟撃されてしまう。
何しろ政虎は関東管領である。彼がその気になれば、武田軍を上回る大軍を動かすことは十分に可能である。現に政虎は、先の北条征伐で十万もの大軍で相模小田原城(おだわらじょう。神奈川県小田原市)を包囲しているのである。
信玄は確信した。
(きっとそうだ。それならこんなところに陣を布いている場合ではない)
信玄は夜を待って全軍を海津城に集結させた。
まさに「疾きこと風の如く 徐なること林の如く」であった。
朝になって武田軍の移動に気付いた政虎は悔しがった。
「しまった!
絶好機を逃した!」
その一方で、信玄の進軍に感心した。
「さすがは『甲斐の足長殿』と呼ばれている男だ」
「足長殿」とは足が長いわけではなく、すばやいという意味である。
政虎は海津城をにらんで言い放った。
「ただし、同じ手はこの政虎には通じぬ。次に動いた時が、貴様の最期だ!」