4.必殺! キツツキ戦法!

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日本は何をすべきか?
1.出陣! 春日山!
2.対陣! 川中島!
3.合流! 海津城!
4.必殺! キツツキ戦法!
5.看破! 妻女山脱出!
6.恐怖! 車懸の戦法!
7.突撃! 最後の手段!
  

 こうして対陣して半月余りが過ぎた九月九日、海津城の武田信玄は、重陽(ちょうよう)の節句の宴会がてら軍議を開いた。
「すでに川中島に来て半月余りになるが、いまだ上杉政虎とは一戦もしていない。みなの意見を聞きたいと思う」
 重臣・飯富虎昌
(おぶとらまさ。信濃内山城主・兵部少輔)が進言した。
「戦が長引くのは好ましくありません。近々、決戦したほうがよろしいかと」
 側近・馬場信房
(ばばのぶふさ。信春。民部少輔)もこれに同じた。
「長期戦は良くないというのは『孫子』にもあるではありませんか」
『孫子』にはこうある。

「兵は勝つことを貴ぶ。久しき(長期戦)を貴ばず」

『孫子』にもある。信玄にとって弱い言葉である。
「しかし、何かよほどすごい作戦を思い付かないことには、動くことはできぬ。何といっても敵はあの政虎だ」
 そのとき、軍師・山本晴幸
(やまもとはるゆき。勘助・勘介・菅助)が提じた。
「お館様、こんな作戦はいかがでしょう?」
「なんだ?」
「キツツキですよ」
「キツツキィ〜?」
 すっとんきょうな声を上げた信玄に、山本が説明した。
「そうです。キツツキは木の中にいる虫を食べるときに、くちばしを穴に突っ込んで直接食べるわけではありません。まず、穴の反対側をつつくんですよ。すると、虫は驚いて穴から出てきます。それを食べるんですよ」
 信玄は理解した。
「ほう。つまり政虎を何らかの方法で妻女山から誘い出し、動いたところを討ち取るわけだな?」
「はい。まず、軍勢を二つに分け、本隊を川中島の八幡原
(はちまんぱら)に置き、別働隊で妻女山に夜襲を仕掛けます。夜襲に成功した場合、政虎は八幡原に退きます。そこを本隊でトドメを刺すんです。もし、夜襲に失敗した場合でも、政虎は越後へ帰るときに八幡原を通ります。そこで本隊と別働隊で挟み撃ちにするのです」
 信玄は納得した。
「つまり、夜襲に成功しても失敗しても、政虎は八幡原の土になるわけだな?」
「その通りです」
 信玄は重臣たちを見回した。
「そういうことだそうだ。政虎を誘い出すにはこれ以上の作戦はないと思うが、どう思う?」
 重臣たちは賛成した。
「最良の作戦かと」
 信玄は決断した。
「では、馬場・飯富・高坂ら別働隊一万二千人が妻女山に夜襲を仕掛け、わし以下本隊八千人が川中島の八幡原で待ち伏せすることにする」
「了解!」
「で、決行はいつにいたしましょう?」
 馬場の問いに、信玄が答えた。
「今夜だ」

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