3.夫ゲット | ||||||||||||||
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正体不明の肉を隠れ食べて以来、千代は鏡を見ることが多くなった。
自分の顔を見て、しみじみと考え込むことが多くなった。
(なんで?)
千代はわからなかった。
(あたしって、こんなにかわいかったかしらん?)
鏡の中の自分は、確かに自分の顔である。
何が変わったかわからないが、何かが違うのである。
千代には好きな男がいた。
それは、幼なじみの青年だった。名前が伝わっていないので、仮に「幼なじみα」としておく。
幼なじみαはイケメンであった。
読み書きもできて、漁の腕もピカイチで、里の女子どものあこがれの星であった。
当初、幼なじみαは千代のことを何とも思っていないようであったが、最近はそうでもなさそうであった。
そう。ちょうどあの正体不明の肉を食べてからである。
千代はそのことに感づいていた。いつかモノにしてやろうとたくらんでいた。
あるとき、千代は幼なじみαに聞いてみた。
「あたしって、変わった?」
幼なじみαがうなずいた。
「なんか、おまえって若返ったよな」
「若返った?」
「うん。前は年相応に見えたけど、今は十五、六に見えるよ」
「え?え?どーゆーこと?それって、色気がなくなったってこと?」
「ううん。それが逆なんだよ。スゲーんだよ。なんていうか、こうやって面と向かって話しているのが耐えられないくらい、まぶしすぎーって感じ」
「ふーん」
千代はほおづえをついた。
そういえばほおの感触もぷにゅぷにゅである。
そう。あの正体不明の肉のようであった。
「やめろよ。顔が近いよ」
幼なじみαは顔を寄せてきた千代を避けた。
「どーして?小さいときはこのぐらいの距離でよく遊んでたよー」
「昔とは違うんだよ。今のボクには、たったった、耐えられないんだよー!」
「好きっ!」
ぷにょ!
「やめろー!その言葉は、その感触は、理性という名のボクの最終防波堤の爆破なりー!!」
ぶっちゅあーん!
ぷにっ!ぷにっ!
「あれ〜!」
いつしか幼なじみαは恋人αに、次いでダンナαに改訂(バージョンアップ)された。