1.尊いお姫さま | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2023>令和五年1月号(通算255号)卯年味 いなばのしろうさぎ1.尊いお姫さま
|
オオクニヌシにはたくさんの兄がいた。
八十神というので、八十人ぐらいいたのであろう。
現代の感覚ではあり得なく思えるが、無制限に結婚できた昔の権力者の子の数なので、あり得なくはない。
景行天皇の子達もそのくらいいたし(「皇族味」参照)、モンゴル帝国のチンギス・ハンなんかは二千人も子がいたとされている。
ある時、たくさんの兄たちが耳寄りの情報を仕入れてきた。
「イナバに、てぇてぇお姫さまがいるそうな」
「そんなに尊いのか!?」
「もうゲロマブ天最高〜」
「やったー! みんなで見に行こうよ」
「それって結婚しにいくってコト?」
「絶対結婚じゃん!」
兄たちは八十人全員でイナバに住むお姫さまに求婚に出かけた。
で、荷物持ちとしてオオクニヌシも連れていった。
さすがに八十人分の荷物は重すぎた。
「待ってよ〜」
兄たちは勇んで足早に歩いていったが、オオクニヌシだけは遅れがちになった。
「遅いんだよ!」
「だって、全員の荷物を袋に詰めて担いでいるんだよ〜。重すぎるよ〜。誰か手伝ってよ〜」
「嫌だね。もういい。先行くから、後からトロトロついてきな」
「ひどいよ〜」