2.既成事実 | ||||||||||||||
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伊弉諾尊の死後、高天原は天照大神と月読尊が共同統治することになった。
が、保食神(うけもちのかみ)殺人事件(「大豆味」参照)によって二人は不和となり、昼の世界を天照大神が、夜の世界を月読尊が別々に治めることになったという。
昼の政治を姉が行い、夜の政治を弟が行う――。
これは何を意味するのであろうか?
私は弟が姉を表向きの女王に立て、実権を握ったと考えている。
そしてこれが卑弥呼の共立であり、連邦国家邪馬台国の成立を示しているのであろう。
また、二人の仲は実の姉弟と考えられない以上、夫婦同然の生活を送っていたと思われる。そう考えると、保食神殺人事件は月読尊の不倫が招いた結果であり、あるいは保食神を殺したのは、天照大神の方だったとも考えられる。
「天照さまと月読さまは仲たがいされたそうな」
うわさは素戔嗚尊の耳にも入ってきた。
実は素戔嗚尊は追放宣告されたものの、出立日を延ばしていまだ高天原に居座り続けていたのであった。
「好機だ!」
素戔嗚尊は剣や弓を持って天照大神の宮殿を訪れた。
「いよいよ根の国へ出立しようと思います。その前に姉上に別れのあいさつを」
が、完全武装でやって来た弟を見て、天照大神は疑った。
「あいさつというのは口実で、実は私の国を奪いに来たのでは?」
素戔嗚尊は主張した。
「誓って私には謀反心はありません!」
「ホントに〜?」
「ホントだって!疑うのなら『誓約』をしましょう!」
二人は天安河(あまのやすかわ。所在不明。福岡県筑前町・宮崎県高千穂町・滋賀県野洲市などが候補地)で「誓約」を行い、その結果、五男三女神(天忍穂耳尊+天穂日命+天津彦根命+活津彦根命+熊野久須毘命+市杵島姫命+湍津姫命+田心姫命)が誕生したという。
さて、この「誓約」とは何なのか?
記紀にはややこしく書いてあるが、簡略すると、素戔嗚尊の剣を天照大神がかみかみし、天照大神の珠を素戔嗚尊がナメナメした結果、なんと八人の子が生まれたというのである!
まったく不思議なことであるが、これも現実的に考えることができる。
つまり、二人が行った「誓約」とは「性約」であり、しかも、「八人の子」ということは、「長期にわたって夫婦生活を営んでいた」と解釈すべきであろう。
これはいったい何を意味するのであろうか?
そうである。
素戔嗚尊は月読尊から、「妻」と「権力」を略奪したのである。