4.栗(くり) | ||||||||||||||
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男には決して譲れないものがある。
私にとっては栗だけは絶対に譲れなかった。
三分あれば十分であった。
おせちからすべての栗を消し去るためには――。
よく怒られたものである。
「栗ばっか食べてないで、豆も食べなさい!」
それでも私の箸(はし)は、果敢にも栗へと向かう。
無論、天津甘栗(てんしんあまぐり)も好きである。
袋を開けると、次から次へと手がいく。
手が止まらないときは、袋を見る。
「原材料 栗(中国産)」
思わず手が止まる。
「中国産!」
効果抜群である。
「仕方がない。一袋だけにしておいてやるか……」
栗の実は黄金色に煮あがるため、金運がつく食べ物とされた。
栗金団(くりきんとん)の「金団」とは、金満という意味である。
また、「搗(か)ち栗」は「勝ち栗」に通じるため、武運がつく食べ物とされた。
ようするにこれも駄洒落である。
「搗ち栗を食べて勝つ!」
このオヤジギャグを最初に言った人は受けたことであろう。
「搗ち栗で勝つ?ププッ!」
「ヒャッハー!おもしろいなっしー!」
だからこそ、大ウケ大賞のあかしとして現在に至るまでおせちに搗ち栗が入っているのであろう。
が、笑いに肥えた現代人は、この程度のギャグではではもう笑わない。
「搗ち栗を食べて勝つ!」
「さぶっ!」
未来人も同じである。
未来には過去の栄光など何の意味もなさない。
搗ち栗がおせちに入り続けている限り、オヤジギャグの作者は後世までずっとずっとさらし者にされ続けるのである。