2.老人と海

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★ 東日本大震災
1.とりかえばや物語
2.老人と海
3.きけわだつみのこえ
4.兄弟仁義
5.こんにちは赤ちゃん

 山幸彦は浜辺で途方にくれました。
 ワナにかかって苦しんでいた雁
(がん)がいたので、逃がしてやりました。
「クワッ!クワッ!」
 喜んで飛び去っていく雁を見て、一瞬だけ笑顔になりましたが、
「はあ……」
 現実を思い出して泣いてしまいました。
「うわーん!とーすればいいんだ〜」

 そこへ白髪白ヒゲの老人がやって来ました。
「どうした?ニーチャン」
 山幸彦は元気がない理由を話しました。
 老人はうなずきました。
「そういうことなら、わしの知り合いが解決してくれるじゃろう」
「知り合い?」
「ああ。海神
(わたつみ・わだつみ)だ。この竹のかごに入りなさい」
「ワタツミ?おじいさんはいったいナニモノなんですか?」
 山幸彦は疑いつつもかごに入りました。
「人はわしを塩土老翁
と呼ぶ」

 塩土老翁はうんしょと山幸彦の入ったかごを担ぐと、海沿いのがけの上まで運びました。
 眼下はすぐ海です。山幸彦は波しぶきを受けて不安になりました。
「あれ?僕をこんな所に置いて、どうするつもりですか?」
「落とすんじゃよ」
 山幸彦はビックリしました。
「え!それって、いわゆる、そのその、スマキじゃないですか〜!」
「つべこべ言わなーい」
 ドン!
 潮土老翁は山幸彦の入ったかごを勢いよく蹴り押しました。
 ごろりんこ。
 かごは海面へ向かって傾きました。
「やめろー!人殺しー!ワー!」
 どっぱーん!
 こぽこぽこぽぽっ。
 かごは海に落ち、深く深ーく沈んでいきました。

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