2.老人と海 | ||||||||||||||
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山幸彦は浜辺で途方にくれました。
ワナにかかって苦しんでいた雁(がん)がいたので、逃がしてやりました。
「クワッ!クワッ!」
喜んで飛び去っていく雁を見て、一瞬だけ笑顔になりましたが、
「はあ……」
現実を思い出して泣いてしまいました。
「うわーん!とーすればいいんだ〜」
そこへ白髪白ヒゲの老人がやって来ました。
「どうした?ニーチャン」
山幸彦は元気がない理由を話しました。
老人はうなずきました。
「そういうことなら、わしの知り合いが解決してくれるじゃろう」
「知り合い?」
「ああ。海神(わたつみ・わだつみ)だ。この竹のかごに入りなさい」
「ワタツミ?おじいさんはいったいナニモノなんですか?」
山幸彦は疑いつつもかごに入りました。
「人はわしを塩土老翁と呼ぶ」
塩土老翁はうんしょと山幸彦の入ったかごを担ぐと、海沿いのがけの上まで運びました。
眼下はすぐ海です。山幸彦は波しぶきを受けて不安になりました。
「あれ?僕をこんな所に置いて、どうするつもりですか?」
「落とすんじゃよ」
山幸彦はビックリしました。
「え!それって、いわゆる、そのその、スマキじゃないですか〜!」
「つべこべ言わなーい」
ドン!
潮土老翁は山幸彦の入ったかごを勢いよく蹴り押しました。
ごろりんこ。
かごは海面へ向かって傾きました。
「やめろー!人殺しー!ワー!」
どっぱーん!
こぽこぽこぽぽっ。
かごは海に落ち、深く深ーく沈んでいきました。