1.ボクのしあわせ | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2023>令和五年2月号(通算256号)残酷味 八十神の逆恨み1.ボクのしあわせ
|
オオクニヌシはヤガミヒメを連れて葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)に凱旋(がいせん)した。
そして、母のサシクニワカヒメに新妻を紹介した。
「私たち結婚しました」
「え! あなたが?」
「はい」
「たくさんの兄たちじゃなくて?」
「はい」
「あなたはたくさんの兄たちが求婚しに行くのについていっただけじゃなかったの?」
「そうだったんですが、妻が兄たちを振り、私を選択したんです」
「それで、たくさんの兄たちは納得したんですか?」
「たくさんの兄たちは関係ありません。結婚は当事者同士が納得すれば、それでいいんです」
「ねー」
遅れてオオクニヌシとヤガミヒメの後からたくさんの兄たち、八十神も帰ってきた。
彼らの目には一様に怒りの炎が宿っていた。
ぞわぞわっ!
サシクニワカヒメは嫌な予感がした。
たくさんの兄たちは憤懣(ふんまん)やる方なかった。
口々にオオクニヌシをののしりまくった。
「あのヤロー!」
「すげームカつく!」
「どうして優秀な俺たちが結婚できなくて、ウスノロバカヤローな弟が結婚できるんだ?」
「しかもアイツ、オオクニヌシって名乗りやがった!」
「オオクニヌシとは葦原の中つ国の王のことだ!」
「ヤツに王位を譲った覚えはないぞ!」
「そうだとも! ヤツにはアシハラノシコオ(葦原醜男)っていうチンケな名前があるじゃないか!」
「どうして『シコオでーす。うへうへ』って名乗らないんだ!」
「ププッ! そんな変な名前を名乗っちゃったら、一発で振られちゃうだろうな!」
「そうだよ! ヤツなんかヤガミヒメと結婚する資格なんてないんだ!」
「俺は認めねーぞ!」
「俺も認めねーぞ!」
「誰一人認めねーぞっ!」
「ぜってー許さねーからな!」
「ぶっ殺してやる!!」