★ 郡上八幡城力石伝説 | ||||||||||||||
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赤髭作兵衛 PROFILE | |
【生没年】 | ?-1667 |
【出 身】 | 美濃郡上藩剣村(岐阜県郡上市) |
【本 拠】 | 剣村 |
【職 業】 | 農民 |
【家 族】 | 不詳 |
【霊 地】 | 郡上八幡城下赤髭明神(郡上市) |
昔、美濃郡上藩内の剣村(つるぎむら。郡上市)に百姓の若者がおりました。
名は作兵衛(さくべえ。義農作兵衛とは別人。念のため)。
大柄で力持ち。毛深くて人柄がよく、赤褐色の髭(ひげ)を蓄えていたため「赤髭作兵衛」と呼ばれてみんなから慕われておりました。
寛文七年(1667)、第四代美濃郡上藩主(遠藤氏としては第三代)遠藤常友(えんどうつねとも)が郡上八幡城を大改修しました。
「来たれ!力自慢の若者たち!」
そのため、作兵衛も改修工事に参加することになりました。
普請奉行(ふしんぶぎょう。工事現場監督)は集められた若者たちに命じました。
「石垣を直すのに大きな石が必要だ。吉田川(長良川の支流)の河畔に大きな石がゴロゴロしている。大きければ大きいほうがよい。なるべく大きな石を城まで運んでくるように」
「ははあー」
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郡上八幡城主一覧表 (江戸〜明治) |
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城主名 | 在職年代 | 石高 |
(稲葉貞通) | (1588-1600) | (4.0) |
遠藤慶隆 | 1600-1632 | 2.7 |
遠藤慶利 | 1632-1646 | 2.7 |
遠藤常友 | 1646-1676 | 2.4 |
遠藤常春 | 1676-1689 | 2.4 |
遠藤常久 | 1689-1692 | 2.4 |
遠藤胤親 | 1692 | 1.0 |
井上正任 | 1692-1693 | 5.0 |
井上正岑 | 1693-1697 | 4.7 |
金森頼時 | 1697-1736 | 3.9 |
金森頼錦 | 1736-1758 | 3.9 |
青山幸道 | 1758-1775 | 4.8 |
青山幸完 | 1775-1808 | 4.8 |
青山幸孝 | 1808-1815 | 4.8 |
青山幸寛 | 1815-1832 | 4.8 |
青山幸礼 | 1832-1838 | 4.8 |
青山幸哉 | 1838-1863 | 4.8 |
青山幸宜 | 1863-1871 | 4.8 |
※ 石高の単位は万石 |
若者たちは争って大きな石を持ってきました。
が、作兵衛の持ってきた石はケタ違いでした。
九十貫(約三百三十八キロ)余りもある大石を背負って城に登ってきたのです。
若者たちは驚きました。
「すげえ!」
「重くないのか!」
「これはもう、石じゃなくて岩!」
しかし、負けず嫌いの若者もおりました。
「ふん。オレだってやろうと思えば、もっと大きな石を背負えらあー!」
名前が伝わっていないので、百姓G(グレート)とでもしておきましょう。
百姓Gは百貫超の石を探して持ち上げました。
「うおー!」
ずん!
「重っ!」
背負ったときにかなりひざにきましたが、それでもがんばって城に向かいました。
ずしっ!ずしっ!
地面のめり込み度も半端ではありません。
「なんのこれしきっ!」
どか!どか!どか!
百姓Gは歯を食いしばって城に向かいました。
若者たちは驚きました。
「うわっ!岩が動いている!」
「いや、よく見れば人間だ!」
「とんでもねえーヤツだ!」
そこへ二つ目の石を採ってこようと作兵衛が城から戻ってきました。
作兵衛は、百姓Gとすれ違うときに、チラッとその背にある大石を見ました。
「御苦労様です」
「ふふん」
百姓Gは得意げでした。声には出しませんでしたが、目で聞いてみました。
(おまえはコンナノ背負えないだろ〜う?)
作兵衛は無言で通り過ぎていきました。
百姓Gは勝ち誇りました。
(勝ったぞー!オレは赤髭に勝ったんだー!)
腹の中で、腹の底から雄たけびを上げました。
ところが、作兵衛は負けてはいませんでした。
なんと今度は九十貫の大石を二個重ねて背負い、地響きを立てて登ってきたのです!
ずずーん!ずずーん!ずずーん!
若者たちは仰天しました。
「なんだ?地震か?」
「ひょええー!百姓Gよりスゲーのがいるうー!」
「ここはバケモノの楽園かあー!」
ずずーん!ずずーん!ずずーん!
さすかにこれには百姓Gも完敗でした。
「ハハハ……。オレはとんでもないヤツと張り合ったもんだ……。とてもオレのかなう相手じゃねえ……」
ずずーん!ずずーん!ずずーん!
ただだならぬ地響きに振り返った普請奉行は、度肝を抜かれました。
「なな、何という大力だ!信じられん……」
普請奉行は大石の下の作兵衛に声をかけました。
「お前には後で殿様からじきじきに御褒美がもらえるであろう」
作兵衛は感激しました。
(殿様からじきじきに御褒美!)
感激のあまり、力が抜けて舞い上がりました。
いや、舞い上がったのではなく、逆だったのです。
ずっしーーーーーーん!
べっちゃーーーーーん!
「ぐえぼっ!」
作兵衛は大石の下敷きになりました。
普請奉行はびっくりしました。
「うわっ!つぶれた!」
慌ててそこらにいた若者たちをけしかけました。
「何をしている!誰か助けてやれー!」
が、大石はびくともしません。
「重すぎます!」
「こんなに大きな石は、赤髭作兵衛しか動かせませーん!」
「赤髭はこの下だー!みんなで動かすんだー!」
なんとか大石はどかされましたが、もう手遅れでした。
すでに作兵衛はぺっちゃんこになって事切れていました。
「赤髭ー!」
「ごめんよーおれが張り合ったばかりにー!」
「わしこそ声をかけなければ、こんなことにはならなかったのだー!」
「うわーん!こんな最期、悲しすぎー!」
作兵衛はみんなに手厚く弔われ、赤髭明神という神様になりました。
今でも作兵衛が運んだ大石は郡上八幡城の出丸跡に残っています。
[2009年8月末日執筆]
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