2.実 行

ホーム>バックナンバー2018>平成三十年10月号(通算204号)大坂味 福沢諭吉の禁酒方法2.実行

スポーツで有名2
1.提 案
2.実 行

 私は禁酒するためにタバコを始めることにしました。
「塾長が飲兵衛をやめて愛煙家になるそうだ」
 話を聞いた塾生の中から、タバコをくれたり、キセルを貸してくれたり、わざわざ買ってきてくれたりする者が現れました。
 おかげで私は毎日嫌でも煙にまみれることになりました。
「ゲホッ! ボフッ!」
 確かに初めは嫌でしたが、十日、十五日慣らしているうちに風味がよくなってきました。
 ぷっぷくぷかぷはぶはーっ!
「うめえ! やっぱりうますぎやわ、これ」
 で、約一か月で私は立派な愛煙家として完成してしまったのです。

 ところが、誤算がありました。
 酒をやめるためにタバコを始めたのに、酒のほうもやめられなくなってしまったのです。
「ぷはー!ぷかー!ぷはー!ぷかー!こいつらどっちも手放せねえぜー!」
 キセルを片手に徳利を傾けていた私を見て、高橋順益が笑いました。
「なんだなんだ? 『二刀流開眼』か?」
「うるせえ」
「大方こうなることは予想していたぜ」
「!」

 こうして私は酒もタバコも両方やるヤツに成り果ててしまいました。
 年を取ると酒は自然に飲まなくなりましたが、どうにもタバコはやめられません。

[2018年9月末日執筆]
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