★ 起きない人の起こし方 | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2021>令和三年11月号(通算241号)皇族味 起きない人の起こし方
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伝十二代大王・景行天皇には八十人もの子女がいた。
うち、大碓命と小碓命は、双子の兄弟であった。
ある日、小碓命は朝餉(あさけ・あさげ)を食べにきたが、大碓命は姿を見せなかった。
「大碓命はどうした?」
「まだ寝てるよ」
景行天皇は不機嫌になった。
「そういえば、昨日の朝餉も夕餉(ゆうけ・ゆうげ)も食べにこなかった。おまえの兄は何をしているんだ?」
「忙しいんじゃないですか〜」
「女遊びでか?」
「……」
図星であった。
小碓命は答えなかったが、兄がミノで見つけきた美女二人(兄比売・弟比売)とのチョメチョメにハマっていることは知っていた。
景行天皇は怒った。
「起こしてこい!」
「はい!」
小碓命は兄を起こしにいった。
案の定、大碓命はまだ眠っていた。
美女二人はもう起き出していなかった。
「お兄ちゃん、起きて〜」
呼びかけても、大碓命に反応はなかった。
「朝餉だよ。起きてよ〜」
揺り動かして仰向けると、さすがに反応した。
「ううん、もうちょっと寝る」
兄はすぐに寝返ってうつ伏せてしまった。
「お父さんが呼んでるって! 早く起きて!」
ゆっさ!ゆっさ!
小碓命は激しく揺さぶってみた。
「お兄、起きろ!」
「うるさいなー。俺は眠たいのっ!」
「起きろってば!」
「……」
大碓命は反応しなくなった。
小碓命はキレてきた。
「起きろ、コノヤロー」
「……」
「起きやがれ、アニキ!」
「……」
「起きろって言ってるのが、わからねーのか! クソアニキ!!」
「……」
「ぶっ殺したろか、テメー!!!」
ぼっこ! ぼっこ!! ふるぼっこ!!!
小碓命はたたいた。なぐった。めちゃくちゃに蹴りまくった。
「なっ、何するんだっ!!」
さすがに大碓命は飛び起きた。
ぱんち! きっく!! らりあっと!!!
それでも、小碓命の暴力は止まらなかった。
「こりゃたまらん!」
大碓命は厠(かわや)に逃げ込んだ。
ばーん!
小碓命の飛び蹴りが厠の戸をぶっ飛ばした。
「キッサマァーーー! 起きろって言ってんだよぉーーー!!」
「起きてる! 起きてる! もうすっかり起きてちゃってるって! こんなにもお目々パッチリだって!!」
「知るかぁー! ぐあぁぁぁぁーーー!!!」
小碓命は鬼の形相で飛びかかってきた。
大碓命は恐怖しかなかった。
「いややー!」
背を向けて逃げようとすると、
がっし!
左腕をつかまれた。
それでも逃げようとしたため、思いっきり引っ張られた。
「ふんっ!」
びちびちびちぃー!
ちしぶき、ぶしゃー!
「ぎゃーーー!!」
大碓命の左腕はちぎられてしまった。
それでも、
(今だ!)
自由になったすきに逃げようとしたが、
がっし!
今度は右腕もつかまれた。
「ふんっ!」
ぐきぐきぐきぃー!!
「痛ぇーー!!」
ちのり、べたー!
大碓命は右腕もちぎられてしまった。
なお逃げようとした兄の脚を、小碓命は、
がしっ! がしっ! ばたーん!
両方捕まえてぶち倒した。
そして両脚をつかんだまま股(また)に足をかけると、
「死ねぇーーーーーー!」
怪獣のような雄叫びを上げて左右に思いっきり引っ張った。
びち!びちっ!びちちっ!
「やめろぉーーー! 股が裂けるぅーーー!! マジで死ぬぅぅーーーー!!」
びりびりびりびりぃーーー!!
「おりゃーーー!!」
「ぎゃあぁ〜〜〜!」
ばきーん! さんまいおろし〜、まっぷたつぅ〜〜〜!!
かえりち、どばどば! ぐっちゃぐちゃー!!
一方、景行天皇は二人を待っていた。
待っても待っても来ないので、様子を見にいった。
「どうした〜?」
大碓命はいなかったが、小碓命はなぜか血だまりの中であぐらをかいていた。
景行天皇が恐る恐る聞いた。
「お、大碓は、起きたか?」
小碓命は答えた。
「起こしても起きないので、バラバラにしてコモに包んで捨ててやりました」
「!!!」
(「英雄味」へつづく)
[2021年10月末日執筆]
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※ この起こし方は模範例ではありませんので、絶対マネしないでください。