2.真相?

ホーム>バックナンバー2021>令和三年4月号(通算234号)桜花味 石割桜2.真相?

桜の季節
1.伝説
2.真相?

「何を書いているの?」
 陸奥盛岡藩六代藩主・南部利幹に聞かれた家臣が答えた。
「巨石の割れ目から桜が生えてきた物語です」
「ああ。宝永五年(1705)の落雷で割れた岩から生えてきた『ド根性桜』の話だな?」
「はい。でも、盛っているうちに史実とはちょっと違う話になっちゃいました」
「歴史歪曲
(わいきょく)かよ」
「歴史歪曲ではありません。後世の人々は、伝説と呼ぶでしょう」
「どれどれ」
 利幹は読んでみて笑っちまった。
「ワハハ! ちょっとどころじゃない。全然別物になっちゃってるじゃないか」
「いけませんか?」
「これはこれでおもしろい。ぶっ飛びすぎていて、誰も史実とは思わないだろう」
「でも、河原でおさつと太郎という子供が力比べしていたのは本当ですよ」
「子供が岩を投げあっていたのか?」
「いえいえ、どっちが大きい石を持ち上げられるか比べっこをしていただけですよ。おさつが勝ってましたけどね」
「子供だと、女の子が強くてもおかしくはないな」
「御意」
「物語に登場する『殿様』とは、余のことかな?」
「そのとおりです」
「で、冒頭に登場する『不審者』の正体は、おまえ」
「!」

[2021年3月末日執筆]
ゆかりの地の地図
参考文献はコチラ

※ 伝説では殿様が誰かは特定していません。宝永五年(1705)の藩主であれば、南部利幹になります。
※ 石割桜は明治時代初期には桜雲石と呼ばれていました。
※ 昭和七年(1932)の火災で木の一部が焼失しましたが、庭師・藤村治太郎の尽力で生き残りました。
※ 岩手県の銘菓「石割桜」は同木に由来しますが、平成三十年(2018)に生産を停止しました。

inserted by FC2 system