3.大内義弘×足利義満

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金正恩×文在寅
1.長慶上皇×後亀山天皇
2.阿野実為×楠木正勝
3.大内義弘×足利義満

将軍さま」
「おお、大内介か」
「南との統一交渉がまとまりました」
「やったか」
「南朝の帝
(後亀山天皇)が京都へ帰還し、うちの帝(後小松天皇)に譲位する形で統一することになりました」
「ふふん、つまり、我々北の主導で統一が成功するわけだな?」
「その通りです。ただし、南は二つの条件を出してきています」
「当然であろう。タダで正統な皇位のあかしである三種の神器は渡すまい」
「一つ目は、今後の皇位継承は、南北で代わりばんこだそうです」
「なるほど」
「二つ目は、諸国の国衙領大覚寺統(南)が、長講堂領持明院統(北)が支配する、と」
「……。つまり南は、三種の神器をくれてやるから領地を増やして欲しい、と、要求しているわけだな?」
「はい」
「その上、今後の皇位は代わりばんこ」
「はい」
「ちと、南に都合が良すぎやしないかい?」
「大丈夫です。肝心なのは南から三種の神器を奪うことなんです。神器さえ手に入れてしまえば、もうこっちのもんです。南に皇位を譲り返すことはありません」
「ほう」
「諸国の国衙領とて同じことです。うちの帝が認めなければ、南の領地になることはないのです」
「ほうほう。つまり、約束を反故にしろということだな?」
「そうです。悪く言えばそういうことになりますが、良く言えば、いいとこ取りです。戦わずして実を取る兵法なのです」
「悪いヤツよのう〜」
「悪いことは将軍さまから学びました」
「何だと?」
「山名の大乱の時の将軍さまのあくどさは、今でも忘れられません」
「ほざくな」

*            *            *

 明徳三年・元中九年(1392)十月二十八日、後亀山天皇一行は吉野(よしの。奈良県吉野町)を出発、閏十月二日、嵯峨(さが。京都市右京区)の大覚寺に入った。
 従ったのは阿野実為ら四十人ほどで、北から大内義弘が護衛で迎えたという。

 閏十月五日、雨の中、後亀山天皇が持参した三種の神器が後小松天皇の皇居・土御門東洞院の内裏に移された。
 後亀山天皇は不思議に思った。
「あれ? 譲位の儀式は?」
「やりませんよ、そんなもん」
「なぜ?」
 大納言・日野資教は、当然のように答えた。
「だってあなたは帝ではありませんから。ニセモノですから」
「!」
「どうも。落し物を届けてくださって、ありがとうございました」
「三種の神器は落し物じゃねえーーー!!」

[2018年4月末日執筆]
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