2.逃げさせます!

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北朝鮮庵&民進党のあがき
1.守り通します!
2.逃げさせます!
3.売り渡します!
4.行き倒れます!

 新田義貞の執事・船田義昌(ふなだよしまさ)は、残党狩りを徹底した。
「まだまだ北条一門でも見つかっていない者たちがいる!どこかに逃げたかその辺に隠れているはずだ!残党を見つけた者には褒美を与える!残党をかくまった者は残党共々処刑だ!者ども、捜し出せっ!」
「おおーっ!」
 義昌の家来たちは鎌倉近辺をあら捜しした。
 民家だけではなく、寺社にも押しかけた。
 僧になっていた残党は殺され、尼になっていた残党の妻女は強制的に愛人などにさせられた。

 北条太郎邦時様をかくまっている私は恐怖した。
(うちにも来たらどうしよう〜)
 おびえているところに来やがった。
「よう!」
 人相の悪い義昌の家来たちがドヤドヤと登場した。
「お前は確か五大院右衛門宗繁といったな?」
「はい」
得宗家の御内人だったが、いち早く官軍に投降したため命を救われたそうだな?」
「あ、はい。その通りです。ありがたいことです〜」
「まさかと思うが、誰か北条一門の関係者をかくまっているってことはないだろうな?」
「かくまってませんよ〜」
 私はウソをついた。
 関係者どころか、本丸中の本丸、得宗の御曹司をかくまっているなんて言えるはずがなかった。
「だろうな。残党をかくまっている者はもれなく死刑だもんな。怖くてかくまえるはずはあるまい」
「……」
「逆に残党の居所を密告した者にはたんまりと褒美がもらえるそうだ。どこか残党の隠れ家に心当たりがあるものはないか?」
「さあ? とんと知りませんな。私はもう、北条一門とはきっぱり手を切りましたので」
「隠れているという情報だけではなく、隠れているかもしれないという不確かな情報でもいいのだぞ」
「とんと」
「実は、ここに来たのは、ある情報を耳に入れたからだ」
「どんな情報ですか?」
「ここに北条太郎邦時に似た子供がいると」
「!」
「中間の格好をした九歳ぐらいの子供が、太郎邦時にソックリだと」
「!!」
 私は青くなった。
 人相の悪い家来のボスが強面を近づけて聞いた。
「その中間は今どこにいる?」
「ちちっ、違いますって!うちの中間は、太郎ナントカじゃありませんてっ!」
「それは聞いていない。どこにいるかを聞いているのだ」
「そっそっ、そうそう、おお、お使いに行っております! そんで、今日は夜までは帰りません!」
「そうか」
 ボスはニヤッとして顔を引いた。
「どの道、今日は確かめようがない。俺を含めて誰も太郎邦時の顔を知る者はいない。明日、見知った者を連れて改めて確かめに来る。その中間、明日はいるだろうな?」
「はい、いますけど、うちの中間は断じて太郎様――、いえいえっ!太郎ナントカじゃありませんからねっ」
「それはこちらが判別することだ。お前は疑わしいソイツを用意しておきさえすればいい」
「へ、へい……」

 人相の悪い義昌の家来たちは帰っていった。
 私は追い詰められた。あたふたした。挙動不審を隠すことができなくなっていた。
(まずいぜー!まずすぎるぜー!このままでは太郎様も私も処刑されちまうぜー!」
 私は、危険を察知して抜け出して別棟の壁でボルダリングしていた太郎様に告げた。
「明日、新田の連中があなた様を捕まえに来ます!」
「え!」
「大丈夫です!あなた様を捕まえさせやしません!鎌倉にいるのは危険です!用心棒を一人つけますので、今夜中に伊豆山権現
(いずさんごんげん)へ向かってください!」
 伊豆山神社
(静岡県熱海市)北条氏ゆかりの神社だ。源頼朝北条政子の駆け落ちは世に知られている。
 太郎様は素直だった。
「わかった。しばらく伊豆山でかくまってもらうんだね? ――で、おいちゃんはどうするんだい?」
「おいちゃんは日を改めて抜け出します。大勢で行くと怪しまれるでしょう」
「わかった。じゃあ着替えてくる」
「着替えなくてもいいんです。貧乏そうな身なりのほうが怪しまれません」
「それもそうだね」

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