ホーム>バックナンバー2013>１．人力車

　安政五年(1858)に締結された日米修好通商条約により、横浜に居留地ができた。
　同年に相次いで結ばれた安政の五か国条約締結以降、居留地には多くの外国人が住んでいた。

　あるとき、西洋人が出かけようと人力車を頼もうとして、旅館のボーイに頼んだ。
「『クウマ』ヲ用意シテクレ」
　クルマの意味であるが、ボーイは首をかしげた。
「はあ？何とおっしゃいました？」
「『クウマ』ダ、『クウマ』」
「あ、『ク〜マ』ですか。はいはい、ただ今」

　ボーイは近所の見世物小屋からそれを連れてきた。
「用意できました」
「サンキュー」
　それに乗ろうとした西洋人は肝をつぶした。
「オー！ノー！熊(クマ)ジャナイヨー！」