1.落ちた! | ||||||||||||||
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小子部栖軽 PROFILE | |
【生没年】 | ?-? |
【出 身】 | 大倭国?(奈良県?) |
【本 拠】 | 大倭国 |
【職 業】 | 官人(伴造) |
【 姓 】 | 連 |
【主 君】 | 雄略天皇 |
【墓 地】 | 雷丘(雷岡。奈良県明日香村) |
空は雲一つなく晴れ渡っていた。
心地よい風が吹く夏の朝であった。
「気持ちのいい朝だ」
離宮・磐余宮(いわれのみや。奈良県桜井市)で、大王・雄略天皇は朝から元気であった。
「そうですね〜」
大后・草香幡梭皇女(くさかのはたひのひめみこ・おうじょ)は二度寝から起きたようである。
「こんな気持ちのいい朝にすることといえばなんだ?」
「さあ?」
「婚合(くながい)だー!」
「もう!」
ばっ!
雄略天皇は寝台に飛びついた。
が、寝ていたのは草香幡梭皇女ではなく、オッサンであった。
「ぎょ!なんだコイツは!?」
ばばっ!
雄略天皇は瞬時に飛びのいた。
よく見ると、腹心の小子部栖軽(ちいさこべのすがる)が眠っていた。
「どうしました?」
草香幡梭皇女が外から入ってきた。
「なんだ、おまえ。外でしゃべっていたのか?」
「ええ、朝の小用帰りなんで」
栖軽は目を覚ますと、目をこすってハッと我に返った。
「ももも申し訳ございません!私、とんでもない場所で居眠りしておりました〜」
雄略天皇は苦笑した。
「危なかった。もう少しでオッサンと婚合うところであった」
雄略天皇は背伸びして空を見上げた。
その時、何かが空でピカッと光った。
「あれはなんだ?」
光は白い長い雲を伴い、飛鳥(あすか。奈良県明日香村)の方へ流れ落ちていった。
「何でしょう?」
「白いヘビが飛んでるみたいですね」
そうこう話しているうちに、
どごぉーーーん!
すさまじい爆音がとどろき、グラングランと地が揺れた。
「なんだ!? なんだ!?」
一同はうろたえた。
衝撃は一瞬でやみ、普通の地震でないことは明らかであった。
「今のは何だ?」
「さっきの『白ヘビ』が落ちたんでしょう」
「いや、『白ヘビ』はまだ空に残っている」
「本当ですね。先っぽだけ落ちたんでしょう」
決めつける栖軽に、草香幡梭皇女は異論を唱えた。
「ヘビじゃなくて、雷じゃない?」
「雷にしてもおかしいが、その方が近いように思う。雷の神様が誤って落ちたのかもしれない。いずれにせよ、何かが飛鳥のほうに落ちたことは確かだ」
雄略天皇は栖軽に命じた。
「何が落ちたか確かめてこい」
「了解!」