3.生肝の捜索 | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2019>令和元年9月号(通算215号)揉消味 平貞盛のもみ消し3.生肝の捜索
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平維叙は丹波康頼が控えていた房(へや)に駆け込んだ。
「父が私の妻子を殺そうとしています! 胎児の生肝を取ろうとしているんです!
助けてください!」
「わかりました! 何とかしましょう」
康頼もびっくりして維叙について飛んで行った。
そして、維叙の妻を押さえつけて今まさに生肝を取ろうとしていた平貞盛に呼びかけた。
「いけません! それはいけません! 血がつながっている人の生肝では効果ないんです! 赤の他人の、それも男の子の生肝でないと」
「そうなのか」
貞盛は刀を収めて維叙の妻を解放した。
「怖かったよー!」
彼女は維叙に抱きついてわあわあ泣いた。
貞盛は聞いた。
「館内に他にはらんでいる女はいないか?」
維叙は答えた。
「飯炊きの女が妊娠六か月になります」
「まさか、おまえの子ではあるまいな?」
「違いますよっ」
「よし、連れてこい」
飯炊きの女は何かもらえるのかと思ってニコニコしてやって来た。
でも、来るなり斬(き)られた。
じゅぱ!
「ぎゃー!なにすんのー!」
パカッ。
むんずり、どろどろり〜ん。
てってれー!
胎児が取り出されたが、男の子ではなかった。
「女か、残念」
そのため、母子ともども無残に捨てられた。
その後、別のはらみ女を見つけたため、貞盛は声をかけた。
「よう」
「なあに?」
じゅぱ!
「きゃー!なにすんのー!」
パカッ。
むんずり、どろどろり〜ん。
てってれー!
「また女か。ざーんねん」
そのため、母子ともども無残に捨てられた。
その後、また別のはらみ女を見つけたため、貞盛は声をかけた。
「よう」
「なあに?」
じゅぱ!
「きゃー!なにすんのー!」
パカッ。
むんずり、どろどろり〜ん。
てってれー!
「やった! 男だー!助かった〜。生肝、取ったどー!」
こうして貞盛は一命を取り留めた。