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　平成二十一年(2009)四月、残念な「事件」が二つ起こった。
　一つは「地デジ大使(草�g剛)の失脚」であり、もう一つは「行け！行け！自衛隊」である。
　この二つは異なるようで、実は共通点がある。
　それは「たいしたことではない」ことを積み重ねたという点である。

　「地デジ大使」は不運であった。
　あの時、酒を飲まなければよかった。
　飲んでもよかったけど、脱がなければよかった。
　脱いでもよかったけど、騒がなければよかった。
　騒いでもよかったけど、抵抗しなければよかった。
「裸だったら何が悪い！」
　彼が泥酔全裸時に吐いたというこの問いには、実に深いものがある。
　あきれはするが、私はこの問いに対する的確な返答を導き出すことができない。

　彼のしたことの一つ一つはたいしたことではない。
　しかし、これらをすべてやってしまったがために、逮捕という最悪な事態を迎えてしまったのである。しかも、国民的アイドルのメンバーであったがために、三面記事にチョロッとではなく、スポーツ紙各紙の一面にデカデカと掲載されてしまったのである。
　警察のやりすぎという意見があるが、すべては「地デジ大使」のやりすぎから起こったことである。また、マスコミの騒ぎすぎという意見もあるが、そもそもマスコミの仕事は騒ぐことなのである。それにしても、言い訳じみたことをしなかった彼の釈明態度は立派であったといっていいであろう。

　「地デジ大使」が失ったものは大きいが、救いなのはやり直しがきくということである。
　ところが「自衛隊」のほうはそうはいかない。
　しかもこちらは「過失」ではなく「故意」なのだからタチが悪い。何が問題かはすでに「内乱味」ほかで述べているので再述しないが、国民は「テロワイン」や「海賊ビール」や「ミサイル焼酎(しょうちゅう)」によって「ちゃんぽん泥酔」になってしまっているのであろう。
「防衛省昇格？勝手にすれば〜」
「インド洋給油？仕方ないね〜」
「ミサイル迎撃？しなきゃまずいでしょ〜」
「海賊退治？いいことじゃん！どんどんやって〜」
　そう。一つ一つのことはたいしたことではない。
　しかし、これらのことを積み重ねていくうちに、戦争という最悪の事態まで突き進んでいくことになるわけである。
　我々国民は、ぬるま湯に入れられ、少しずつ温度を上げられて茹(ゆ)で上がっていく運命なのだ。

　歴史を振り返ってみてほしい。
　かつて貴族は武士に取って代わられた。
　建武政権は再び武士に取って代わられた。
　藩閥政治家は軍部に取って代わられた。
　文官は常に軍人によって血祭りに上げられる運命なのである。
　しかも軍事政権誕生後は、例外なく大戦争が起こっている。
　それが分かっていながら、何ゆえ政治家は「軍人」優位の法律に改正するのであろうか？自分たちの首を絞めていることに気づいていないのであろうか？
　国民はいい。文官でも軍人でも、強いほうに屈服するものである。

　歴史は繰り返すものである。
　そして、諸行無常なのである。
　まもなく政治家は「軍人」に葬られ、世界は軍拡無際限ドツボに陥り、第三次世界大戦をおっ始め、核の応酬を展開し、ついには地球を終焉(しゅうえん)へと突き落とすことであろう！

　一つ一つのことはたいしたことではない。
　大悲劇が起こったとしても、後悔する者がいなければ、全然たいしたことではない。
　広大な宇宙の中の小さな小さな星の死亡なんて、ヒトなどというたった数十億人しかいない弱小種族の滅亡なんて、宇宙全体の歴史からしてみれば、取るにも足らないことであろう！

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　というわけで今回は海賊退治で名を馳せ、平氏の武士として初めて昇殿(しょうでん)を許された平忠盛の有名な逸話を紹介する。
　鎌倉時代の軍記物語『平家物語』にある「殿上闇討(てんじょうのやみうち)事件」である。

[2009年4月末日執筆]
参考文献はコチラ

「平忠盛殿上闇討事件」登場人物

【藤原忠実】ふじわらのただざね。内覧。前太政大臣。

【鳥羽上皇(天皇・法皇)】とばじょうこう。院政２代。伝74代天皇。

【藤原宗忠】ふじわらのむねただ。内大臣。忠実の盟友。
【藤原顕頼】ふじわらのあきより。参議。院近臣。
【源　師俊】みなもとのもろとし。蔵人頭。村上源氏。

【殿上人たち】
【刺客たち】
【舞姫たち】
【主殿司の女官】

【平　忠盛】たいらのただもり。備前守。鳥羽上皇近臣。