2.酋長の変死

ホーム>バックナンバー2006>2.酋長の変死  

北方領土はアフリカ人のものである
1.江差の密談
2.酋長の変死 
3.国後の蜂起 
4.蝦夷の始末

 しばらくして、クナシリアイヌたちの間に病気が流行した。
 なぜかは分からないが、酋長クラスの人々が次々に病気になったのである。
 アイヌたちは不安になった。
「どういうことだ?」
「伝染病か?」
「いや、何か変だ」

 マメキラフの酋長サンキチも病気になった。
「すまんが、運上屋へ行って酒を買ってきてくれ」
 運上屋とは、和人アイヌの取引所である。
「はい」
 使いは泊
(トマリ。国後島南西端。いちおう北海道泊村)にある運上屋に走った。
 運上屋には松前藩の役人・竹田勘平
(たけだかんべい)と飛騨屋国後支配人・左兵衛(さへえ)がいた。
 左兵衛は、オノヤマというアイヌの人妻を奪って囲っているほか、数々のアイヌ女性を手込めにしているエロ親父である。
「何か用か?」
「主人が病気なんです。酒を分けてください」
 使いはべらぼうな品々との交換を求められることを覚悟したが、竹田の目配せを受けた左兵衛は、すんなり酒を渡してくれた。
「困ったときはお互い様だからな」
 使いは喜んだ。
「ありがとうございます! これで主人の病気もよくなります!」
 すると左兵衛はいやな笑みを浮かべて言った。
「サンキチもこの酒が飲み納めだろうな」
クナシリ・メナシの蜂起関係図

 使いはサンキチに酒を届けた。
 サンキチはそれを飲むと、まもなく死んだ。
 同じ頃、マメキリ
(サンキチの弟)の妻が運上屋でもらった飯を食べたところ、コロリと死んだ。
 マメキリやサンキチの子のホニシアイヌたちは怒り出した。
「これは毒殺だ! シャモの陰謀だ!」
「今までどうもおかしいと思っていた! シャモアイヌを皆殺しにしようとしているのだ!」
「もう我慢できない! シャモを討て! 飛騨屋を打ち壊せ!」
 マメキリやホニシアイヌたちは大酋長ツキノエに迫った。
 ツキノエの子のセワハヤフは同調したが、父は立たなかった。
「耐えるのじゃ。シャモに勝てる見込みはない。歯向かえば傷口を広げるだけじゃ。今まで以上にひどいことをされるだけじゃ」
 マメキリたちは泣いて訴えた。
「おれは妻を殺されたんだ! これ以上にひどいことがあるか!」
「わしは娘を殺された。働かないからといちゃもんつけられて棒で打ち殺された!」
「おらだってもう重労働はいやだ! もとののんびりしたアイヌの生活を返せっ!」
「耐えるのじゃ。耐えれば悪は必ず自滅する。カムイ
(神)は決して悪をお許しになることはない」
「もういい」
 マメキリたちはあきらめた。
「長が立たないなら、おれたちだけでもやってやる!」

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system