ホーム>バックナンバー2018>2.藤原良相(ふじわらのよしみ)
● 藤原良房政権閣僚 ●
(859.4/当時) |
官 名 |
位 階 |
氏 名 |
備 考 |
摂政太政大臣 |
従一位 |
藤原良房 |
藤原北家当主。冬嗣の子。 |
左大臣 |
正二位 |
源 信 |
嵯峨天皇皇子。 |
右大臣 |
従二位 |
藤原良相 |
良房の弟。左大将。 |
大納言 |
正三位 |
安倍安仁 |
民部卿・按察使。良吏。 |
中納言 |
正三位 |
源 定 |
嵯峨天皇皇子。右大将。 |
中納言 |
正三位 |
源 弘 |
嵯峨天皇皇子。 |
中納言 |
正三位 |
橘 岑継 |
氏公の子。奈良麻呂曽孫。 |
権中納言 |
正三位 |
平 高棟 |
葛原親王王子。桓武天皇の孫。 |
参 議 |
正三位 |
伴 善男 |
皇太后宮大夫。国道の子。 |
参 議 |
従三位 |
源 融 |
右衛門督。嵯峨天皇皇子。 |
参 議 |
正四位下 |
源 多 |
左兵衛督。仁明天皇皇子。 |
参 議 |
正四位下 |
藤原氏宗 |
左大弁・左衛門督。葛野麻呂の子。 |
参 議 |
従四位上 |
藤原貞守 |
式部大輔。房前の玄孫。 |
参 議 |
従四位上 |
藤原良縄 |
右大弁。内麻呂の孫。 |
「右大臣公」
「何だね?」
「自信が確信に変わりました」
「何のことだね?」
「やはり先帝は、摂政太政大臣に暗殺されたのではないでしょうか?(諾威味)参照」
「……」
「右大臣公はどう思われます?」
「そだね〜」
「やはり、公もお疑いでしたか」
「そうではない!そうではないというより、そう信じたくはない。どうやら大臣まで出世すると、保身しか考えなくなるらしい」
「ですか。では、新たな犠牲者が出るのを黙って見ているわけですね?」
「犠牲者だと?」
「ええ、もうじきその男も殺されるようです」
「誰が殺されるというんだね?」
「大納言・安倍安仁(あべのやすひと)卿」
「ま、まさか……。安倍安仁卿は亡き嵯峨帝が絶賛していた良吏(りょうり)だ。院別当(いんのべっとう)として辣腕(らつわん)をふるっていたやり手の官僚だ。長年民部卿を兼ねている財政通でもある。この国にはまだまだ彼の知識が必要なのだ。きっと兄もそう思っているはずだ」
「彼が良吏ゆえに『続日本後紀』の編修者に推す声があるのです」
「なるほど。安倍卿であれば、誤った歴史は許さないであろうな」
「そうです。あの承和の変も、事実をそのまま伝えようとするでしょう」
「……」
「摂政にとって、それでは都合が悪いのです」
「だから消すというのか!? 国の宝を切り捨てようとするのか!?」
「そうです。とても見過ごせることではありません」
「さもありなん」
「はい?」
「やむをえないということよ」
「はあ」
「このことは五条后(ごじょうのきさき)に話したのか?」
五条后とは藤原順子(じゅんし・のぶこ)のことで、文徳天皇の生母である。
「いえ、一連のことは何も」
「言わぬほうがいい」
「はい」
「私も何も聞いていない」
「はあ?」
「貴殿はますます出世する。兄や五条との絆を大切にしていれば間違いない。正しきことは二の次だ。危険な橋は渡ろうとせず、これからも保身を考えるべきだよ」
「!」