4.石作皇子の偽装 | ||||||||||||||
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さて、家に帰りインド渡航準備を始めた石作皇子は、冷静に戻った。
(遠い遠い天竺(てんじく。インド)の、広い広い国の中に、たった一つしかない、しかもないかも分からない仏の石の鉢なんて、一生涯かかったって見つけられるわけねーじゃねーか!)
石作皇子は考えた。
(まてよ。これはまともに考えることではないな。なぞなぞじゃねーか?)
彼は確信した。
(そうだ! かぐや姫は希望の品を持ってきたかどうかでダンナを決めるわけじゃねえ!
どんな知恵をしぼったかどうかで決めるつもりだ!)
そう考えた石作皇子は、
「では、今日から天竺へ行ってきまーす」
と、竹取の翁にあいさつしに行くと、渡航したフリだけして山に隠れてしまった。
そして三年後、仏の石の鉢を持って帰ってきた。
むろん、インドで探してきたわけではなく、大和の山奥の山寺にあった黒ずんだ鉢を、仏の石の鉢だと偽装したのであった。
「これが有名な有名な仏の石の鉢でございます」
竹取の翁の取り次ぎで、かぐや姫、それを手にして不機嫌になった。
「光ってないわねー」
見ると、鉢の中に手紙が入っていた。
かぐや姫、開いてみた。
海山の道に心を尽くし果て無いしの鉢(血)の涙流れき
(鉢が見つからないので悲しすぎて血の涙が流れました)
「こんなこと聞いてないわよっ」
かぐや姫、鉢を門の外に捨てさせると、石作皇子に歌を突き返した。
置く露の光だにぞ宿さまし小倉山にて何求めけん
(光ってないじゃない。今まで何探してたわけ?)
石作皇子も返し返す。
白山に会えば光も失するかと鉢(恥)を捨てても頼まるるかな
(姫の余りの美しさに石も光を失ってしまったんですよ〜)
かぐや姫は冷笑したのであろう。もう返歌もしなくなった。