4.夜がまた来る | ||||||||||||||
歴史チップス>バックナンバー2024>令和六年4月号(通算270号)窃盗味 鼠小僧次郎吉4.夜がまた来る
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文政六年(1823)、次郎吉は行動を開始した。
夜になるのを待って武家屋敷に忍び込むことにした。
表門はさすがに夜でも門番がいるので、勝手口の塀を乗り越えて侵入することにした。
最初の標的は伊予松山藩十四万石の大名屋敷(松平定通邸)で、金五両をゲットした。
「これはいい! バクチなんかより簡単に稼げるぜ!」
味を占めた次郎吉は、次々と大名屋敷や旗本屋敷を荒らしまわった。
夜に忍び込むのが基本だったが、時には堂々と真昼間に表門から侵入することもあった。
出入り業者の後について中に入り、夜になるまで空き部屋で隠れているのである。
こうして稼いだカネは生活費のほか、飲む打つ買うで使い果たした。
後世には義賊扱いされてたたえられる次郎吉であるが、残念ながら貧者に施しをしたという正式な記録はないようである。