★ 大名屋敷! 不法侵入! 忍び込んでは盗みまくる!! 〜 日本史上最も有名な連続窃盗犯・鼠小僧次郎吉!! |
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歴史チップス>バックナンバー2024>令和六年4月号(通算270号)窃盗味 窃盗は犯罪です
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ササッ!
男性の横を風が通りすぎていった。
「あれ?」
違和感で男性が振り返ると、
「ひっひっひ」
ふんどしを掲げた男が笑っていた。
男性はそのふんどしに見覚えがあった。
「ま、まさか……」
男性が自分の股を確かめてみると、何も履いていなかった。
「なんじゃこれー! いつの間にぃー!!」
サササッ!
また、女性の横にも風が通り過ぎていった。
「あら?」
違和感で女性が振り向くと、
「へっへっへ」
腰巻を被った男が笑っていた。
女性はその腰巻に見覚えがあった。
「ま、まさか……」
女性が自分の股を確かめてみると、何も履いていなかった。
「キャー! いったい何をしたのぉー!?」
これが江戸時代の元禄期に「活躍」した伝説の窃盗犯・坊主小兵衛(ぼうずこへえ)の技である。
往来で素早く金品を奪い取るのが得意で、スリ稼業の創業者とされている、けしからんヤツである。
五悪 |
殺生 偸盗(ちゅうとう) 邪淫(じゃいん) 妄語(もうご) 飲酒(おんじゅ) |
日本における窃盗の歴史は長い。
おそらくすでに縄文時代から収穫物の窃盗は行われていたと思われるが、最古の犯罪概念である「天津罪(あまつつみ)」と「国津罪(くにつつみ)」に盗みは入っていない。
盗みが悪とされたのは弥生時代以降とみられるが、確実なのは飛鳥時代の仏教伝来以降である(「宗教味」参照)。
偸盗(ちゅうとう)は仏教の五悪の一つで、「窃盗」の語句は飛鳥時代の法令『養老律令』にも登場する。
以降、盗みは現代まで一貫して処罰の対象になってきたが、いつの時代も窃盗は強盗と比べて刑が軽く、死刑になることはまずなかった(織田信長の「一銭斬り」などは例外)。
窃盗は少額が多いため、一億円以上盗まれる事件はなかなかない。
なかなかないそれを、令和六年(2024)三月にアメリカで日本人が起こしてしまった。
空前絶後の二刀流メジャーリーガー大谷翔平(おおたにしょうへい。「二刀味」「鼓舞味」)参照の銀行口座から、彼の通訳を務めていた水原一平(みずはらいっぺい)が四百五十万ドル(約六億八千万円)超も窃盗し、違法賭博(とばく)の胴元(マシュー・ボウヤー)へ勝手に送金してしまっていたという(後に約二十四億五千万円超も盗んでいたことが判明)。
はい、というわけで今月は「窃盗味」にしてみましたー。
幣サイトでは「泥棒味」の袴垂(はかまだれ)以来、十七年ぶり二人目のドロボー主人公になります。
今回のドロボーは袴垂よりも有名です。
鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち。次郎七・次郎太夫)――。
もちろん、御存じでしょ?
「ああ、金持ちからカネを盗んで貧乏人にばらまいていたいい人だね」
ええ、江戸時代の怪盗で義賊(ぎぞく)扱いされていた人です。
でも、最近では、いい人とは思われてないようですよ〜。
盗んだカネも施したりせず、自分で全部使っていたようですよ〜。
悪いヤツなんですよ、コイツは〜。
詳しくはこの物語。
それでは、どぞっ!
[2024年3月末日執筆]
参考文献はコチラ
【次郎吉】じろきち。鼠小僧。武家屋敷専門のコソ泥。
【定 七】さだしち。次郎吉の父。中村座木戸番。
【次郎吉の母】
【次郎吉の嫁】
【次郎吉の姉】
【次郎吉の妹】
【次郎吉の親方】
【違法賭博の胴元】
【商家の番頭】
【商家の手代】
【大名屋敷の奥方】
【大名屋敷の女中】
【借金取り】
【立ちションしていた門番】
【野次馬】
【筒井政憲】つついまさのり。南町奉行。
【榊原忠之】さかきばらただゆき。北町奉行。