ホーム>バックナンバー2007>3.瓢箪(ひょうたん)からホントに駒は出るか?
あるとき、曽呂利新左衛門が大きな瓢箪(ひょうたん)を豊臣秀吉に見せた。
「いいでしょ、これ」
「ほう。見事な瓢箪じゃな。瓢箪にうるさいわしがほめるのだから間違いはない」
御存知と思うが、瓢箪は秀吉の馬印である。
「殿下は『瓢箪から駒が出る』ということわざを御存知ですか?」
「ウソをついたつもりが真実になってしまうことであろう。そのくらいのことは知っておるぞ」
「恐れ入りました。では『瓢箪から駒が出るところ』を実際に御覧になったことはございますか?」
「たわけ! ホントに出てたまるか!『瓢箪から駒』とは、ありえないことをいっているのじゃ!
――確かにその瓢箪は普通のと比べたら大きい。じゃが、その中に入るような馬などあるものか!」
「ところがあるんですよ。なんなら今から出して見せましょうか?」
秀吉は激怒した。
「出せるもんなら出してみよ! 出せなかったらただじゃすまんぞ!」
「はいはい、じゃあ出しまーす」
新左衛門は瓢箪を傾けた。
こんころりーん。
中から何かが転がり出てきた。
「はい! 出ましたけど!」
「なんじゃこれは?」
秀吉はそれを拾い上げた。
それは駒であった。
馬の駒ではなく、将棋の駒であった。
新左衛門は言った。
「はい。出ました! 駒が出ました! 瓢箪から駒が確かに出ましたー!」
「プッ!」
秀吉は吹き出した。
たまらず笑ってしまった。
「ほひっひっひ! くだらん! 実にくだらーん!!」