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　官僚は政治家より数が多い。
　官僚は政治家より任期が長い。
　官僚は政治家より頭がいい。

　ゆえに、政治家が官僚に勝つことは並大抵のことではない。
　やりすぎと思われることまでしなければ、決して勝つことはできないであろう。
　何しろ相手は、この国を百数十年に渡って支配し続けてきた百戦錬磨のツワモノである。藩閥(はんばつ)とも軍部とも財界とも闇(やみ)組織とも堂々と渡り合い、時には手玉に取ってきた老獪(ろうかい)なバケモノなのである。
　そのバケモノが、そんなにたやすくポッと出の政権に屈服するとは思えない。彼らにもまた「役人魂」というものがあるであろう。

　根本的な問題がある。
　政治家が官僚に勝つことはいいことであろうか？
　政治家も官僚も、各種誘惑に弱い同じ人間ではないか？
　勝ったら勝ったで何か別の問題が生じてくるのではあるまいか？
　それでも国民は、ワラにもすがる思いで、政権交代という刷新を望んだのである。

　平成二十一年(2009)八月、自民党は衆院選で惨敗して政権政党から陥落、翌月、民主党(鳩山由紀夫代表)・社民党(福島瑞穂党首)・国民新党(亀井静香代表)からなる鳩山由紀夫(はとやまゆきお)連立内閣が誕生した。
　新政権の目玉といえば、やはり国家戦略局(2010年までは国家戦略室)であろう。
　具体的な職務はよく解らないが、首相官邸に直結し、各省庁の上に位置する新組織だという。
　ということは、孝謙上皇(「女帝味」参照)の勅旨省(ちょくししょう)、嵯峨天皇(「平城味」参照)の蔵人所(「詐欺味」参照)、北条時頼の寄合(よりあい)、徳川綱吉(「仇討味」参照)の側用人、近衛文麿(「制裁味」参照)の内閣情報局などのようなものであろうか？趣向としてはおもしろいが、踏み出したからには国民の期待にこたえてほしいものである。

　というわけで今回は平安時代の強欲役人・藤原陳忠(ふじわらののぶただ)を紹介したい。
　『今昔物語集』には悪者のように描かれているが、その不撓不屈(ふとうふくつ)の根性だけは見習うべきであろう。

[2009年9月末日執筆]
参考文献はコチラ

「藤原陳忠の強欲」登場人物

【麻手麻呂】ましゅまろ。仮名。在庁官人(目代)。

【熱田麻呂】あったまろ。仮名。在庁官人。

【郎党たち】
【秘宝大行列の人々】

【　馬　】陳忠の馬。

【藤原陳忠】ふじわらののぶただ。信濃守(受領)。