5.ルーズベルトは病み上がり

ホーム>バックナンバー2019>平成三十一年三月号(通算209号)祈り味 ルーズベルトを裸にする5.ルーズベルトは病み上がり

日本の祈りと韓国の祈り
1.ルーズベルトを裸にする
2.ルーズベルトはバカボン
3.ルーズベルトは怪しげ
4.ルーズベルトは二番煎じ
5.ルーズベルトは病み上がり
6.ルーズベルトはあおり運転
7.ルーズベルトは権力の鬼
8.ルーズベルトに勝つのだ
9.ルーズベルトを呪うのだ
10.おわりに

 かくて長らく政界より引退していたルーズベルトは、図太い押しの力をもって民主党より一九二八年ニューヨーク州知事に当選して政界に復活したのであった。死線を越えた「金持ちの息子」の政略は、ニューヨークの暗黒市政粛正に大ナタを振るい、伏魔殿タマニーホールをたたきつぶしてアメリカ大衆の人気を博した。いずれ無知単純なヤンキー国民は、政治家の政見も人格も別に問題ではないのだ。目先の変わった新しい、派手な政治を実行さえすれば、大向こうはたわいなくうなるのである。ルーズベルトはニューヨーク州知事在任、二期四年間で老獪なる大衆扇動術を実習した。そして手ぐすね引いて中央政界へ進出の機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていた。
 そこへ一九三二年の世界大恐慌が襲来したのである。世界一の繁栄を誇ったアメリカ資本王国はたちまち崩壊して、全米いっせいに銀行破産、労働罷業、暴動、流血、失業、餓死、農村窮乏、商店廃業が続出して、アメリカは惨憺
(さんたん)たる暗黒の世界と化した。失業者は毎日激増して、一千二百万人を突破し、全米に餓死する者数千人を数えた。それはそのまま放置すれば、戦争に敗北したと同様の悲惨なる混乱状態に陥りかけていた。
 誰がこのアメリカの刻下の危機を打開するか? 一九三二年秋の大統領選挙は、アメリカ死活の深刻なる選挙戦を呈した。アメリカ金権階級を代表する共和党の大統領フーバーは「恐慌打開」を闡明
(せんめい)して再登場した。長年不遇の民主党はこの絶好の機会に党勢を挽回せんと手頃な候補者を物色の結果、小児麻痺で両脚の不自由なルーズベルトの図太い押しの強さを買って「穴馬の追い込み」を狙ったのであった。またしても無知、単純、浮気、軽躁(けいそう)のアメリカ大衆は、新し好みと共和党に対する大不満から、ルーズベルトが七百万票以上の差をもって老政敵フーバーを蹴落として、十一月八日圧倒的勝利の中に当選したのであった。そして大恐慌の嵐の中に翌一九三三年三月四日第三十二代大統領に就任したのであった(ルーズベルトは一九三三年憲法修正により大統領就任式を一月二十日と変更した)。

inserted by FC2 system