4.仮面舞踏会

歴史チップス>バックナンバー2023>令和五年10月号(通算264号)衆道味 遮那王4.仮面舞踏会

ジャニー喜多川性加害
1.硝子の少年
2.ええじゃないか
3.青いイナズマ
4.仮面舞踏会
5.涙くん さよなら
6.ちゅきちゅきハリケーン
7.俺たちに明日はある
8.パラダイス銀河

 それから数日後、鎌田先輩(少進坊。鎌田正近)から夜のお誘いがあった。
「聞いたよ。おまえもめでたくオトコになったそうだな?」
「よくわかんないんだけど」
「ここ鞍馬では、オトコになった稚児は天狗の会に入らなければならないことになっている」
「テングの会?」
「ああ。天狗のお面をつけて夜中に剣の修業をするんだよ。今晩から一緒に僧正ヶ谷へ行こう」
「剣の修業って、木刀でも持っていくの?」
「そんなものはいらない」
「え!じゃあ、太刀
(たち)で真剣勝負!?」
「命にかかわるような危ない鍛錬はしない」
「意味わかんないな」
「剣は男の中心にある」
「?」
「剣は磨けば磨くほど、長〜く硬〜くなる」
「!」

 その晩から、私は僧正ヶ谷で「剣」の修業に励んだ。
 スジがよかった私は、ありとあらゆる技を体得してめきめきと上達し、先輩たちもヒーヒー言わせられる猛者になった。
 老先生
(鬼一法眼)は感心したが、
「それでもまだまだじゃな。おぬしはわしにはかなわない。何しろわしは先祖代々伝わる奥義書を持っておるからのう」
 私はお願いした。
「私は先生を超えたいので、その奥義書を見せてください」
「ダメじゃ」
「何でもしますから〜、お願いお願い〜」
 私が甘えてすり寄ると、老先生はふにゃふにゃ軟化した。
「それなら、おぬしに奥義書を見せていいかどうか、息子に聞いてみよう」
「息子?」
「ああ、わしにはとうの昔に使いものにならなくなった息子がいる」
「どこに?」
「ここに」
 ぴらーん。
「!」
「この『息子』をよみがえらせてくれたら、奥義書を見せてやろう」
 私は躊躇
(ちゅうちょ)しなかった。
「いただき!」
 私がバッとお面を外して飛ばして老先生を見つめて口撃すると、
「アレー!」
 老先生はあっけなく昇天した。
 老先生が感慨深げに明かした。
「十八年ぶり下半身優勝!」

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